部屋の中。ベッドの上で布団を頭から被って丸くなっている。
ゴロゴロというお腹に響く重低音。
「近くなってきた・・・!」
もぞっと布団から頭だけを出すと窓の方へ顔を向ける。
その直後に空を稲光が走って、また大きな音。
「―――っ!」
半分涙目になりながらまた布団に潜り込む。

子供のころ、家に1人で居たときのこと。
その頃は雷が鳴ってても平気だったんだが、その日は雷が落ちた。しかも隣の家。
目の前の落雷と、大きな音。それから隣の家から上がった煙とかを直視してしまって以来雷が苦手だ。

(啓一郎いるかな・・・)
ベッドから降りようとして、止まる。
・・・・・・いや、やめとこう。
大分近くなってるし、もう30分もすれば止むだろうし。
何より私が雷怖くて!なんて・・・柄じゃなさ過ぎる。
そうだ。音楽でも聞いてやり過ごそう。
布団から出ると、iPodを鞄から取り出す。また窓の外が光って、ほとんど同時に大きな音。
「ひっ・・・」
思わず息をのんでしゃがみ込む。・・・今の、何処かに落ちたんじゃないの?
地面にまっすぐ向かっていった光を見て、嫌な意味で心臓がどきどき言っている。
ダメだ。怖い。怖すぎる。落ちたらどうしよう。

「白斗」
「うわああああ!?ごめんなさいごめんなさい!!」

急に誰かに声をかけられて、思わずテンパる。もう何かごめんなさい。よく分かんないけどごめんなさい。
「いいから落ち着け」
後ろから抱きしめられて、耳元でしゃべられる。くすぐったくて身をよじって逃げようとする。
「あ、啓一郎・・・」
何だか急に緊張が解けて、ゆっくりと息を吐く。
心臓に悪いんだけど、色々。
「大丈夫か?」
「・・・何が」
顔だけ後ろを向きながらそう尋ねると啓一郎は苦笑を浮かべる。
「雷。苦手なんだろ?」
「いや、別にそんなことは・・・」
ここで苦手だと言ってしまえればいいんだろうけど、そんな素直に怖いと言えないのが私で。
抱きしめられた格好のまま、そう小さく呟く。
・・・私のバカ。このまま苦手だって、怖いって言えば鳴り終わるまで一緒にいてくれるだろうに。
それでも私は無駄に強がりだから、抱きしめてくれてる腕に縋ることが出来ない。
ゆっくりと啓一郎が離れて、今まで暖かかった背中がひんやりとする。
体ごと振り返って有り難うと口にしようとした瞬間、今までで一番大きな音が響く。
「きゃあああっ!」
「っ!?」
一瞬子供のころを思い出して、訳が分からなくなる。
怖くて怖くて、気付いたら啓一郎に抱きついていて、しかも勢い余って二人して床に倒れ込む。
「も・・・やだぁ・・・」
今絶対何処か落ちた。絶対にどっか落ちた。
「大丈夫か?」
下から手が伸びてきて私の頭を撫でる。
「白斗。落ち着いて深呼吸してみろ」
落ち着いた啓一郎の声を聞いて一度深呼吸してみる。
そのままの体制で啓一郎が私を抱きしめる。
まだ雷は鳴っているが、それよりも耳に響く啓一郎の心音。
ぎゅっとシャツを掴む。
「落ち着くまで側に居てやるから」
「・・・うん」



雷が終わって、私が今の状態に対して冷静になるまで、後10分。





音に溶ける恐怖
(わああああ、ごめん!重かったよね!?)(・・・別に俺はこのままでもいいけどな)(っ!?)



―――
退社間際の土砂降りと雷にむしゃくしゃしたので((
ちなみに隣家に落雷は私が子供のころに本当に見たものです。
怖かったです。未だにあの煙とブレーカーの爆発は地味ーに来ますね



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