12月24日。
世間はクリスマスイブで賑わっている。
「さっむ・・・」
吹き付けてきた風が冷たかったのか、隣を歩く雪崎が小さく呟く。
マフラーに手袋にコートで十分暖かそうだが、どうやら雪崎は寒さに弱いらしい。
「使うか?」
寮を出るときに梅さんに渡されたカイロを雪崎に差し出す。
・・・俺じゃなくてコイツに渡すべきだったと思うんだが。
「ありがと。遠慮無く貰うよ」
雪崎はそれを受け取ると頬に押しつけて幸せそうに笑う。
「本当に寒いのがダメなんだな」
そう聞くと寒いじゃん、と返ってくる。
まぁ、冬だからな。
梅さんに頼まれた買い出しのために雪崎と2人で街に出ている。
(あいつら、楽しんでるな)
遠回りして帰ってこいだとか少しは空気を読めとか・・・。
梅さんもからかっているのか楽しんでいるのか・・・多分からかってるんだろうな。
『イヤねぇ、応援してるのよ』
そんなことを言っていたが・・・応援なのか・・・?
榊と吾妻とどこか楽しんでるような笑みを思い出して、隣にいる雪崎を見る。
「・・・雪崎?どうした」
どこかそわそわしているというか、挙動が可笑しいというか。
思わず立ち止まる。
寒さに弱いみたいだからな・・・熱でもあるのか?
「なっ・・・んでもない!」
そのまま早歩きで歩かれ、一瞬思考が止まる。
慌てて追いかけると雪崎は巨大なツリーを見上げていた。

普段と違ってどこか子供のような、けれどライトに照らされた横顔は大人びて見える。

彼女を大切にしたい。彼女に触れたい。
俺は雪崎にとっての特別ではないけれど。
「こんなツリーがあったんだな」
雪崎の隣に立ってツリーを見上げる。
「話は聞いてたけど・・・見るとは思ってなかったなぁ・・・」
ツリーを見上げたまま雪崎が言う。

「雪崎」

1つ息を吐いてから、彼女を呼ぶ。
「・・・何?」
雪崎がゆっくりと振り向く。
名前を呼べるだけで、嬉しいと思う。
「もう少し見ていくか?」
驚いたように目を見開いた後、頷きながら笑顔を見せる。
笑って欲しい。

一歩分だけ開けて、2人で並ぶ。


特別な距離
(俺と彼女を繋ぐ距離)




―――
水瀬さん視点のクリスマス話。
周囲から見たら2人とも分かりやすいのに何でくっついてねぇんだよっていう2人←
そんな関係が萌えるんです、管理人の属性なんです




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