12月24日。
クリスマスイブ。
「さっむ・・・」
吹き付ける風の冷たさに、思わず身を縮ませる。
マフラーを巻いて手袋をして、厚手のコートを着ていても寒いものは寒い。
・・・寒いの嫌いなんだよね。
「使うか?」
目の前に差し出されたカイロを遠慮無く受け取る。
「ありがと。遠慮無く貰うよ」
はぁ・・・暖かい。
「本当に寒いのがダメなんだな」
「だって寒いじゃん」
動きたくなくなるんだよ、寒いと。
それで、そんなイブの日に何をしているのかと言えば・・・おつかいだ。
明日は寮でクリスマスパーティをやるとかで、色々と買い出しを頼まれた・・・んだけど。
ちらり、と隣を歩く水瀬を見る。
(・・・絶対、からかわれてる)
だって、私と水瀬に買い出しを頼んだときの梅さんの顔・・・笑ってたし。
(どうしよう)
緊張する。
距離が、思ったよりも近くて。
クリスマスと言うこともあってか周囲はカップルだらけで、私たちもそんな風に見えているのだろうかと思うと、余計に。
「・・・雪崎?どうした」
若干挙動不審になっていたせいか、水瀬が立ち止まる。
「なっ・・・んでもない!」
今、絶対顔が赤くなってる。
見られたくなくて、自然と早歩きになる。

「うわぁ・・・凄い・・・」

視界に入った巨大なクリスマスツリーに、思わず足を止める。
キラキラ光っていて、そこだけは現実じゃないようで。
白い息が空を上っていく。
「こんなツリーがあったんだな」
・・・追いつかれてた。
まぁ、立ち止まったんだから当たり前だけど。
「話は聞いてたけど・・・見るとは思ってなかったなぁ・・・」
自分には関係ないと思ってたしね。
と、その時ケータイが震えてメールの着信を知らせる。
・・・梅さん?何だろ、早く帰ってこいとかそんな感じかな。
送られてきたメールの文面を見て、思わず隣にいる水瀬を見る。
買い物が終わったらゆっくり帰ってきていいという内容で・・・。何かものすごい気を遣わせてる気がする。
「雪崎」
「・・・何?」
ゆっくりと振り向く。
名前を呼ばれるだけで、嬉しい。
「もう少し見ていくか?」

優しく微笑まれて、心臓がどくり、と高鳴る。
もう少しだけ一緒に居たい。
「・・・うん」
あと少し、もう少しだけでいい。

少しだけ間を開けて、並んで立つ。
一歩分だけ空いた距離がきっと今の私たちの心地よい距離感。

「見られて、よかった」

目を閉じてそっと呟く。


特別な距離
(後一歩の、愛しい距離)




―――
今年のクリスマスはちゃんと話が書けました(@12/10)
というか毎年ギリギリにやろうとするから忙しくて出来ないんだよ←

安定で水瀬さんのターンのため「水瀬さん書こうぜ!」と思った結果がこれだよ
管理人、くっつきそうでくっつかないこの「あぁもう!」ってなる距離感がやたら好きなので、まだ恋人になる前でのクリスマスの話にしてみました。

水瀬さん視点も書きたいです。頑張れ私



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -