「とりっくおあとりーと!」

黒い帽子に黒い服、手には掃除用のモップ(トワ君のを借りた)。
モップを持っていない手をぐっと差し出すとリュウガ船長がわたしの頭から爪先まで見下ろす。

「そういやハロウィンか」
「そうなんですよ!だから何かください!」

手作りの魔女衣装に身を包んで、さっきから船内を歩き回って。
トワ君とソウシさんからお菓子を貰って、ナギさんにはあまったおやつを貰った。
もしかしたらハヤテさんとシンさんにも何か貰えるかもしれないから、船長に貰ったら突撃してきてみよう。

「ほら、手ェ出せ」
「わ、いいんですか?」

掌に載せられたキャンディを見てウキウキした気分が更に高まる。
ポケットにキャンディをしまっていると、目の端に船長がにやっと笑ったのが映る。

・・・・・・何だか凄く嫌な予感がする。

「じゃ、じゃあわたし行きますね!」

踵を返そうとしたわたしの腰に船長の腕が巻き付く。
「Tric or Treat。何かくれるか?」
「わ、わたしお菓子何も持ってない・・・」

さっきトワ君かソウシさんにもらったやつでもいいのかな。

「ひゃあ!?」

なんて考えている間に船長に担ぎ上げられて。

「おおお、下ろしてくださいいいい」
「お菓子もらえねーんだったら・・・」

わたしを担ぎ上げる船長が楽しそうに笑う。

「悪戯していいんだろ?」



お菓子不足にご注意を


―――


「うっわぁ」

鏡に映った自分の姿を見て思わずそう声を漏らす。
いつも通りに髪の毛は縛っているけれど、大きなリボンは遠目からは猫耳のように見える。
服も黒を基調としていて、手袋のおかげで多少露出は少なくなっているけど・・・

「まぁパーティ用の仮装なんてこんなもんか」

スカートについた猫のしっぽ(を模した飾り)を引っ張りながら呟く。
こんなコスプレじみた格好なんてハロウィンでもなきゃしないしね。
似合う似合わないは置いておこう。考えると悲しくなる。

コンコンとノックをされる。

「はーい」

この部屋をノックするのは啓一郎か梅さんくらいなものだしなー。
ドアを開けると案の定啓一郎が立っている。

「・・・・・・凄いね」

似合いすぎだろフランケンシュタイン。
似合いすぎて子供泣くぞ。

「どした?」

何故か目を合わせてくれない。
「いや・・・何でもない」
「いやいや、どう見ても何でもないって態度じゃ・・・っ」

私の言葉を遮るように口をふさがれて思考が止まる。

「な・・・なっ!?」

突然の事に思わず口をパクパクとさせていると、啓一郎に抱きしめられる。

「あんまり他のヤツに見せたくないな」


自分の姿にご注意を

―――

「あー、まあ似合ってるんじゃね?」

テレビの中でなんつーかっこしてんだというツッコみはなしにしてもらおう。
ジュネスで使わなかったハロウィンの衣装を着て頑張ってみようぜ的なノリだ。
今は誰もテレビに入れられていないし、今日テレビに来たのはちょっとした腕試しだしな。

「千枝はカボチャで雪子は魔女か。お似合いお似合い」

どういう意味よ、と千枝に睨まれたので降参とばかりに両手を挙げておく。
ちなみに俺はミイラ男です。包帯ぐるぐる巻きって結構暑いのな。

「っていうかこの格好なんなのよ」
「え?悠の趣味・・・?」

そうとしか思えないんだけどな。
入るなりコレを着てくれってなんなんだよ。

「えー、アンタや花村じゃあるまいし・・・」
「何言ってんだよ。俺も陽介もちゃんと人選ぶに決まってるだろ」

大丈夫、お前には頼まん。

直後に感じるみぞおちへの衝撃。

「ちょ・・・千枝おま・・・」

腹を押さえて蹲る。
やめてやめて、俺死んじゃうから。

「鳴上くーん。コイツだけ置いていこ!」
「ちょ、千枝さああああん!後生ですから放置プレイはやめてええええ!」



口の軽さにご注意を





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