星に願いを
―――

「星、綺麗に見えますね」
川原の土手に並んで座りながら私は隣に居る涼平に声をかける。
七夕には少し早いけれど、警視庁帰りに私たちは少し遠回りをして星を眺めて帰ることにした。
「ここまで来ると灯りが少ないですからね」
涼平が言うとおり、都心部から離れた此処は街灯も少ないので星が綺麗に見える。
キラキラと輝く星を見ながら、七夕の日にもこれくらい晴れたら織姫と彦星はちゃんと出会えるんだろうか、なんて似合わない乙女な事を考える。
「あ、そうだ」
ふと思い立って鞄の中からメモ帳とペンを取り出す。
竹もないし、短冊なんかじゃないけれど。
「何してるんですか」
「ぎゃ!見ないでくださいよ!」
暗いから多分見えはしないだろうけど、見られたら恥ずかしいので一応隠す。
これでも乙女ですし!
「・・・隠されると余計に見たくなるな」
「涼平って何か意地悪だ」
柄じゃない恋する乙女な願い事を書いたメモ帳を手の中で握りつぶす。
苦笑をした涼平が立ち上がると私に手を差し出す。その手を取って立ち上がって何も言わずに帰路に着く。

「ずっと涼平の隣に居るよ」

自分に言い聞かせるようにそう呟くと、私は涼平の指に自分の指を絡ませる。
ぎゅっと涼平が私の手を握るのに、幸せな気持ちが沸き上がってきて。

「今日は私の家でご飯、食べていきませんか?」

ずっとずっと続いて欲しいんだ。

―――

「願い事って言ったらやっぱりこれだろ!」
「『世界最強』・・・ハヤテさんらしいですねぇ」
食堂のテーブルに座ってわたしとハヤテさんとトワ君は短冊に願い事を書いていた。
ヤマトはそろそろ七夕の季節で、話の最中にその話をしたらハヤテさんとトワ君がやる気になったので今こうしてそろって短冊に向かっている。
「・・・お前らは何をしてるんだ」
そこにシンさんがやってきて怪訝そうな顔でわたしたちを見る。
「七夕ですよー。シンさんも一枚どうですか?」
「お前達はまたくだらないことを・・・」
まあ予想はしていたけれど。
別にいいじゃないですか!と短冊を持ってひらひらとさせる。
・・・・・・シンさんが喜んで短冊に願い事書くのは、流石に見たくないな。うん。
何を書こうかな、なんてペンを握ったまま考えていると手からペンを奪われる。
「あ、何するんですかシンさん!」
「お前の願い事だろ?俺が書いてやる」
ニヤリと口元にいつもの意地悪な笑みを浮かべたシンさんが何かをさらさらと書き付けていく。
「―――!!」
「シンさん、何て書いたんですか?」
思わず固まっているとトワ君が短冊をのぞき込む。

【シンさんの犬】

ご丁寧にわたしの名前まで書いてある。そして否定できないのが悲しいところ。
何だか悔しくなって、シンさんからペンを奪い返して余っていた紙に文字を書き付ける。
「お前」
「何て書いたんですか?」
「秘密です!皆さんが読めないようにヤマトの言葉で書きました!」
・・・多分、シンさんには読めてしまってると思うけど。

『ずっとシンさんを支えます』






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