39 求める 執筆者:tm
みーんみん、蝉が忙しく鳴き続ける。
そんな蝉がとまっている木々が作る影に上手いこと入りながらB組生徒は海へと向かっていた。
「あっつぅ…」
「なんで海まで歩きやねん…!」
「翼宿、五分くらい我慢するのだぁ…」
と翼宿に注意する井宿もぐったりとしたように歩いている。
「いえーい!ハルの影ふーんだ!」
「今バリアー使ってるから無効なんですぅ!」
「うわ、そんなルール自分知らなかったんだけど!」
「ついさっきうちが作った!」
「いや、そんなドヤ顔で言われても自分困る!」
「シャシャシャシャ!
あ、マリの影踏んだりー!」
「大丈夫、私まだあと三機残ってるから」
「「なにそれずるい!」」
ユカ、マリ、ハルは影踏みをして遊んでいるようで随分元気である。
そんな三人をじとー、とした目で見る他のB組メンバー。
「餓鬼やな、こいつら…」と翼宿が小さく呟いた。
「翼宿…さっきのアヒルの礼に、良いことを教えてやろうか?」
「随分上からやな…」
唐突に心宿が翼宿にそう問いかけた。
翼宿は上からな心宿の態度に少しむっ、とする。
とはいえども良いこと、と言えばだれでも知りたくはなる。
心宿はパサァ…と自分の髪を爽やかな動作で払いのけるとふ、と一つ笑って見せた。
「あれを見るがいい、翼宿」
「?…普通のでっかい雲やないか」
心宿の指差す先には山の向こうにずっしりと構える夏特有の大きな大きな入道雲。
心宿と翼宿の会話を聞いていたユカ、マリ、ハル以外のB組メンバー全員小さく首をかしげる。
だが自信ありげな顔を崩さない心宿、その言葉の続きを皆真剣な表情で待っていた。
「あの中には…」
ごくり、誰かが唾を飲む音。
そして…
「あの中には…
天空の城!ラピュタが存在しているのだ!!!!!」
「驚いたか!驚いただろう!?
これは私の可愛い可愛い生徒のお前たちにだけ特別に教える秘密だ…
そうだな…お前たちの大切な存在の者だけに、伝えていってもらいたいものだ。」
なんて一人で熱く語る心宿をスルーし皆は期待して損した、とでも言いたげな顔ですたすたと歩いて行く。
そして少し歩いたところでマリは立ち止まりポケットからあるものを取り出し、それを高く掲げた。
「心宿先生!」
「ん…!?」
太陽の光を反射するそれは紛れもない鏡。
「目が、目があぁああああ!」
夏の強い日差しを反射したそれを見た心宿の反応が勿論それだったことは言うまでもないだろう。
その後心宿がとなりのト●ロの主題歌を口ずさみながらスキップをしていてB組の生徒がドン引きしたのはまた別の話。