白と黒のコントラスト



暑い。溶けてしまいそう。以上。そんな台詞を口にしたらもっと暑くなりそうでとりあえず黙ってみるけど、それで暑さが和らぐわけでもない。遠くから聞こえてくる蝉の声に耳を傾けているわけでもないのに私を犯す大音響は体を這いずり回ってずたずたにする。そういえば、誰かが、蝉は7日で命尽きるって言ってたなぁ。土の中に何年っているのにたったの一週間で死んでしまうなんて。決めた。生まれ変わっても絶対蝉以外の生物になろう。ん、待てよ。そしたら今聞こえてるこの音は7日後にはいない蝉達の足掻き声か。成る程。……じゃなくて。そもそも、私はなんでこんな真夏日にクソ暑い教室なんかで汗だらだら流しながらレポートなんてしないといけないんだ。全くもって理解不能。


「お前が、古典の授業中に寝ててたからだろ」
『そうなんだけどもっ! って、なんでわかったのさっ、ゆ、き……むら?」
「うわぁ、まだ全然進んでないじゃん」


あの先生に目を付けられるなんて本当にバカ丸出しだよねー、とか言われながらも私の頭はストップしている。え、えええ。あれ。


「……痛いんだけど。なんで俺はいきなりお前にほっぺたつままれないといけないのかな」
『……仁王雅治、じゃない』
「は? お前一回しめられたいの?」


なんで。なんでなんでなんで。
なんで、こ、この男が。幸村が。


「め、がね」


黒縁のスタイリッシュなメガネをつけた幸村は、私が発したその単語に満足そうに微笑むと「伊達だけどね」なんていけしゃあしゃあと抜かしたものだから、そのままぽかんと口を開けっ放しにしながらその姿に見惚れた。何この人。なんでこんなにかっこいいわけ。え、伊達メガネ、え。ど、どうしよう。イケメン怖い。というかイケメン過ぎて怖いんですがどうすれ。


『ば、っ、っひ、ち、近い、んです、がっ』
「はは、いい声」
『めっ、眼鏡がっ、あたっ、当たってるから! 頬っぺたにっ、っ」


軽いリップ音に連れて私の顔にかかっていた影が遠くなる。ぼんやりと輪郭を帯びてきたのは白い肌に映える黒縁眼鏡。
意地悪そうに唇を舐めた幸村は私の前で微笑みながら確実に。


「惚れ直した?」
『は?』
「眼鏡好きなんだろ? この間柳生の眼鏡で騒いでたから殺してやろうかと思ったよ」
『は、えっ、た。確かに眼鏡好きだけど……』
「そこで頑張ってるお前に眼鏡な俺をプレゼント」


そんな戯言を言ってきたものだから、あまりにも自信満々なその顔にイラついて唇を無理やり合わせてやる。何よ。惚れ直すも何も、これ以上惚れたら死ぬんですが。そんな私の心の台詞を聞いたかのように幸村はまた微笑み、弧を描いた唇のままで私に口づけた。
やばい。溶ける。








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初めまして管理人の純です。
いつも足を運んでいただきありがとうございます!

胸の高鳴りが止まらないという愛様のお言葉に私は胸が壊れそうですふふふ←
しかも、作品の中でも、拝啓彼氏様が一番好きとは嬉しいです。
幸村と彼女のあの距離感をこれからも楽しんでいただけると幸いです。
私の体調のことまで気を使っていただけるとは……。これはもう、最大級の興奮であります!
愛様もこの夏を是非楽しんでくださいませ。
リクエストありがとうございました!




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