※赤也視点



「はい。じゃあおさらいだよ」


部室に近づいた時に聞こえた声。幸村部長の声だ。おさらいって、後輩の指導でもしてんのか、なんて考えながら、部室の扉を開こうとした時。

急に後ろから、肩をポンと叩かれた。


「あれ、柳先輩。どうしたんすか??」
「赤也。今、中に入るとお前の命が危ない確率95……いや。96%だ」
「高っ!!!」


いやいや。
命の危険って、なんでそんな危ないことになんだよ!! ……だけど、幸村部長なら有り得る。
なんて言ったって、あの幸村部長だ。この間、幸村部長が大切に育てている花壇にボールを入れてしまった野球部にも容赦なんてせずに、静かに怒りまくった幸村部長だ。
でも、それにしても、そんなきれきれMAXな部長と誰が一緒にいんだよ。


「精市の最大のからかい相手だ」
「……真田副部長っすか?」
「違う」



柳さんは、なんだか少し不機嫌な顔をしている……気がする。
いつも同じような顔だから、判断が難しいけど。それにしても……幸村部長のからかい相手って……。…………あ。



「もしかして」
「ああ」



渚先輩だ。
幸村部長にからかわれるのなんてあの人くらいだ。……いい意味でも、悪い意味でもだけど。
俺は少し扉に近づいて、耳をそっと、寄せた。



「はい。もう一回」


一体何の話しをしてんだろ。
もう一回ってことは、何かの勉強でもしてんのかな??
二人で勉強なんて、すっげー仲良いよな。あー羨ましい。



『……む、無理っ!! 無理に決まってんでしょっ!!』
「俺の言ったこと聞こえなかったの?? はい、もう一回」
『最低っ!! むっ、無理だって』


無理?? そんなに難しいことなのかよ。幸村部長が出す問題ってくらいだから、すっげー難しい問題に違いないよな。なんか応用の応用、みたいな。



『なんで、幸村のことをご主人様っとか呼ばないといけないのっ!』
「暇つぶし」
『馬鹿幸村っ』


…………え。



「や、柳さん」
「何故ああいう流れになっているかなど俺が知りたいわけないだろう」
「そ、そうっすよね」


でも、部室の中の幸村部長と渚先輩が、なんだかんだ言ってラブラブなのを、俺も他の奴らも知ってんだよな。



「羨まし……」



ボソッと呟いた台詞に、少し柳さんが反応して苦笑した。
部室の外まで幸せも漏れてるって思った俺のとある一日。








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