*バレンタイン前 俺があいつと付き合いだしたのは俺の誕生日から一週間後のことだった。 大体、俺の誕生日に何事もないように「おはよう幸村」って言ってきた時にはさすがに殺意芽生えたよね。 だから、ついむかついて「俺の誕生日プレゼント用意してなかったんだから、俺の彼女にくらいなれば? どうせ、暇なんだろ」とか言った俺によくもあいつは返事をしたものだ。 だから、初めて迎えるあいつとのバレンタインに、柄にもなく顔が緩みそうになるのを隠して登校した。 つっけんどんに渡してくるだろうその顔想像するだけでこんなになるとか俺も終わってる。 ……けど。 朝から見るのは女、女、女。本当に他の奴ばっかり。 は? あいつは何してるわけ? とりあえずニコニコしないといけないとかめんどくさい。っていうか離れろよ。うざったい。香水ぷんぷんさせながらこられてもイライラするんだけど。とか思った時に不意に屋上に目がいって。 「……仁王?……と……」 そこからはもう、猛ダッシュ。途中で、仁王のことを探してる女子がいたから「仁王は屋上にいるから俺が降りてきたら登ればいいよ」って助言してあげた。ざまあみろ仁王。俺の彼女と屋上なんかにいたから悪い。 とにかく、仁王からひっぺがして、渚を部室まで連れ込んでソファの上まで連行。 その上に、手に持ってるチョコレートは余った物だとか言い出すし。蹴られたんだろ。そんなの見たら分かる。そのくせ、それを言わない。なんで俺を頼らないかな。イラつく。 好きな女が我慢するの見て嬉しくなんかない。俺のためだったらいいけど、どうせくだらない女子かばってんだ。……ますますイラつく。 だから、せめてのお仕置きといわんばかりに「食べさせて」と言うと、顔を真っ赤にしながらも渚は了解した。 ああ、やばい。可愛い。そんな風に真っ赤にされたら俺までうつりそう。 指に唇を触れさせるたびに跳ねるその感度の良さにこっちがどうにかなりそうで、最後の一粒はその指を一緒に食べた。 やばい。甘い。って思ってたら。 『も、もう限界っ』 ……ああ、こっちも限界。押し倒したい。 だけど、こんなムードもくそも無いところは勘弁だ、と自分を戒めてゆっくり抱きしめた。 甘い。だけど、俺のことをちゃんと考えてくれてる甘さ。 それでも素直に「美味しい」とは言ってやれるほど素直じゃなくて、ただ愛おしい想いをどうやって伝えようかと考え付いた結果。 「……甘すぎ。渚は馬鹿なわけ?」 『えっ、うっ、嘘!!!』 「しかも、持ってくるの遅いし、俺のを仁王にやってるし、また俺に言わなかったし。あーあ、本当に嫌になる。なんなのお前」 『ちょっ、まっ、えっ』 「だから、お仕置き……」 そんな難癖をつけてキスした。 唇が甘いのかチョコが甘いのか。……どっちもか。やばい。ずっとこうしてたい。 そうも思ったけど、いきなりで全部やるのは勿体無い気もして、すぐに唇を離してやった。「ボヤボヤしてると、おいていくから。早くしてくれないかな」なんていう言葉は俺に言い聞かせてる言葉。 初めてのキスはどうやって奪ってやろうか、とも考えていたけど、なんか理性が抑えきれなくなったキスって感じでかっこ悪い。 ……まあ、あいつが照れた顔見れたからいいか。 ああ、早くしてくれないかな。 じゃないと、こいつの可愛さで俺が死にそう。 ーーーーーーーーー 幸村君も苦労しているんです。 |