付き合って半年時期 「なあ、めちゃくちゃ美人だろ!」 「マジだっ!! 髪おろしたらマジで別人っ!!!」 図書館で誰かが小声でそんな台詞を言っているのを聞きながら、ぼんやりと考えごとをしていた。 嗚呼、もう昼休みだっていうのに、今日はまだ一度もあいつに会ってない。 だからと言って、自分から会いにいくほどに素直にはなれない。 というか、あいつがもう少し素直に「淋しい」って言ったら、俺だって……。 「いや……それはそれで……」 理性が保てない。 ウブな彼女のために、口づけさえまだな俺は本当に偉いと思う。 ってか、本当なら、今すぐにでも俺の家に連れて帰って、ベッドに押し倒して、食べてしまいたいくらいなんだけ……。 「マジで幸村部長の彼女って美人だよな!!」 …………。 なんか嫌な単語が聞こえた。 は??え、幻聴じゃあないよね??っていうか。この声。 「元から美人とは思ってたけどよ、髪おろしただけで、変わりすぎだろ!!」 「へえ、見せてよ」 「私服とかぜってーやべ、うおっ!? ゆ、幸村部長っ!?」 そこに写っていたのは、髪を結ぶために髪をおろしながら友人と話しているらしい俺の彼女。……の、おそらく隠し撮りの写真。 話していた二人を見たら、テニス部の一年生だということに気づき、にこりと笑い。 「この写真……もちろん俺にくれるよね??」 「はっ、はいいいっ!!」 今日の一年生の練習メニューは、三倍だな、なんて考えながら、見つめた写真。 本当に幸せそうに、本当に楽しそうに何かを話している。 もしこの時の話題が、俺のことだったら、思わず抱きしめてしまいそうだと思いながらも、こっそりと写真をポケットにしまう。 隠し撮りの犯人は、蓮二にでも聞けば分かるだろうし。さて、このままでも仕方ないから俺から会いにいこうか。 いや、会いたくて仕方ないから、かもしれないな。 泣いた顔も怒った顔も、照れ隠しする顔も、笑う顔も。 全て愛おしくて、だからこそ、意地悪したくなる。 「……ああ……本当に……」 俺は完全、君中毒。 今日は、なんて言ってあいつを虐めようか。 せめて、君が愛おしすぎて、顔が緩みませんように。 , |