首筋にひやり、と温度が漂う。

ホワイトデーに精市からもらったネックレスをさりげなく着けているだけなのに、体が一瞬一瞬で火照りそうになるのが、なんだか悔しい。どうしてこんなに精市のこと好きなんだろ。まあ、伊達に三年間も片思いしてないからね。あー、そう考えればきっと二年前の私が、今の状況を知ったのならば、失神して完全に復帰できなくなるくらい嬉しいんだろな。そんなことをぼんやり考えながら、これまたぼんやりとテニスコートを見る。
大学のテニスサークルに入った精市は、私があげた蒼いリストバンドをゆうゆうとつけている。いや、つけて頂いている。うん、なんか、私の貰ったものとは比べ物にならないくらい安い値段の物な気がしてきて。……そうは言ってもあれも、スポーツ店に行って云々悩んで選んだ一品だから、安物、というわけではないんだけど。……問題は、私はこんなに胸がいっぱいになりながらネックレスつけてるのに、あんなに素知らぬ顔でリストバンド付けてることで、なんだかそのギャップさにいらってする。
……言えるわけないけど。だけど、だけど。



『精市ももっと照れて見せればいいのに』
「へえ、何に?」
『っ!? わ、わわー、ゆっ、きむらくーんっ!』
「……は?」
『いや、あ、あの、なんでも』


この男は一体何時の間に私の目の前に来たのか。というか、あれ、さっきまでテニスしてたよね?



「渚が変な顔しながらブツブツ言ってる時にはもう終わったよ」


あ、そ、そうなんですか。
と返すと精市は、なにか不機嫌そうに、ぶすりとしながら私の隣に座った。程よく汗をかいた精市。タオルと水を渡しながら、お疲れ様、と言って彼の顔を見る、ちゅ。……ちゅ? い、今っ。



『っ?! せっいっ……』
「わ、間抜け顔」
『いっ、いきなり何っ?!』
「いや、なんとなく。渚がタオルとか渡しながらお疲れ様とか言うからね」
『はっ?? いっ、意味わからっない、しっ……』
「だーかーら……」


こういうの、ちょっと憧れてたんだよね。そうやってあったかく微笑む精市があまりにもかっこよすぎて、「その相手が私なんかですいませんねー」と照れ隠しに言うと、くすりと笑った精市が私の耳元で一言。



「君だから、だよ」



そういうことをさらりと言ってのける彼にはやっぱり勝てない。あー、苛つくくらい好きです。





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