一くくりにされた髪と、黒縁の眼鏡。大正時代の女学生を彷彿とさせるいで立ちは、純真潔白の色に染まっている。
一年生の頃から生徒会に所属し、教師そして生徒の絶大なる信頼をうけてきた彼女にとっては、会長という役職がどれほどに思いいれの強いものか。

可憐。それでいて勇敢。まさにこの二言。
男子生徒を一切寄せ付ける事がないこの学校のトップに君臨するにふさわしい清い心。
彼女は、常時涼しげな表情を浮かべ、颯爽と廊下を歩く。その背を見つめ下級生は感嘆の溜息を漏らし、同級生でさえ尊敬の眼差しを送る。その際に胸に揺れるブローチは、代々続く会長の決定的な証であり、玲華にとっては思い入れのあるものの一つであった。


『であった……じゃないんですけど』


いや。やっとこれから始まるっていうのに、どうして私の目の前にこの男がいるのだろう。
……まあ、なんとなく理解できるのだけれども。じゃなくて。
そもそも彼が今座っている席は、まさに私が今座ろうとしていた「会長席」だ。そこに遠慮もなく座り、くつくつと笑っている。ああ、なんなんだろうその泣き黒子。男の癖に、色も白く、なにより……。


「なんだ。せっかく俺様がお前の説明をしてやったのによ」


彼は、優雅に右手で髪を払うと、美しく整った顔で、口許を吊り上げながらも、まるで当たり前のように言ってのけた。
そして、お前のためだと言わんばかりに微笑を浮かべる。その笑みを他の子に向けてしまえばいいのに。
すでに役員が帰宅していたからよかったものの、彼女たちがいたら騒然としてしまう。

……いろんな意味で。


『頼んでない。……で?? なんであんたがここにいるのかな』

「お前に会いに……」

『今すぐ帰って跡部景吾』


冷たく言い放ったものの、何処か偉そうに足を組み、勝手に私の椅子に座る男の姿に目眩がした気がした。
見目麗しい、と言ってしまえばその通りだ。……というよりも、見目麗しすぎる。

彼は、もう一度足を組みかえると綺麗な微笑を作り私の名前を呼んだ。




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