キンキンと耳を殺してくる金属音。
その果てしない先に見えた一瞬。
ここは、何処だろう。
見た事がない映像。いや、見た事がある映像。私はこの場所をよく知っている。知らないはずがない。
ここは、私がいた場所。
歩く道の先に広がる映像。
「玲華せんぱーいっ!」
「赤也! 練習に戻らんかっ」
記憶。記憶。遠くから聞こえてくる残った音。そう、赤也君。彼は可愛い可愛い後輩だった。真田君は相変わらず真面目で、だけどとても優しい人で。
「おや、今日の練習はもう終わったのですかね?」
「毎日よくやるぜよ。偉い偉い」
私のことを、呼んで微笑む暖かい温度。柳生君は、律儀に私に微笑みかけてくれて、仁王君は暑さにうんざりしながらも私のこととを褒めてくれて。
「そうだ、今度俺の天才的妙技を教えてやるぜぃ。……ジャッカルが」
「俺かよっ」
むけられた優しげな光の反射が、まぶしくて、煌いていて。
丸井君はなんだか嬉しそうに笑っていて、ジャッカル君も困り顔しながらも楽しそうで。
「少し休憩していくといい。あそこのベンチを使え」
私の頭を撫でる、大きな手の平と。そう、柳君はいつだって私のことを心配してくれていた。
「玲華、お疲れ様。ドリンク一緒のでいいでしょ? フフ、そんなに照れないでよ』
私にむけられる愛おしく、優しく、ほとばしるように触れはじける微笑み。
私のためだけにむけられた笑み。
嗚呼、そうだこの人は私の大切な人。
この人は……。
『せ、い……』
「玲華……っ?」
『あ……』
瞳を開けるとそこに不安げに瞳を揺らした早苗が見えて、すぐに私の前でぼろぼろと泣き出してしまった。
可愛らしい顔が歪みながらも、その嗚咽声がシーツに吸い込まれているのをぼんやり見ながら自分が倒れた事を知った。
そうだった。
耳鳴りが鳴って、頭がおかしくなってしまって。そして、気付けば私は白い空間にいた。
交流会はどうなったんだろう。
会長が倒れるなんて、一生の不覚だ。気付けばぎりぎりとこぶしを握り締めていたようで、「痛いよ」という声音と、そっと触れた手の温度に瞬間的に何かが廻った。
『ゆ、き……むら、君』
「具合はどう? 気分悪くは無い?」
心配そうにむけられた蒼い双眸に頷きながら「迷惑かけてすいません」と謝罪を述べると幸村君は何か言いたげに口を開きかけて、「いいよ」とだけ返してくれた。
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