ふと目線を合わせると、ニコニコと笑う早苗と目が合う。


「ついに……今日から、だね」

『……うん』

「私はずっと、ずっーと玲華の側にいるからね!! 助けるからね!」


真っすぐな目と微笑み。脳裏にとっさに霞んだのは、紅い色と、淡い色。その二つ。
ただ、言葉をくれるこの友人が何よりも大切な存在だということを改めて再確認しながらも、もう一つ呼吸を落す。


『ありがと……早苗』


その笑みを瞼に閉じ込め、息を吸う。資料の香り。インクの混ざった匂いと呼吸音。緊張していないわけじゃない。私だって、足が震えてどうにかなってしまいそうだから。でも、「あの人」は、こういう舞台で何度も何度も立ち、乗り越えてきたんだ。立つ場所もシュチュエーションも全く違うのだけれども。だけど、だけど。
少しは、近づけているのかもしれない。

その私が動く度にキラキラと。そして。胸に光り輝く証。
緻密なデザインのそれを手にして、ゆっくりと、そして凛々しく声をあげる。


『よし、行こう』


彼女に、そして自分に言い聞かせるように一つ踏み出した先。

広がる空間。瞳。
大きく。開く。風。
開かれた先に待つ瞳は、全部が私を見ている。まばゆいライトに眼が眩みそうになりながらもなんとか平常心を保ち。


『新入生の皆さんこんにちは。私は生徒会長の櫻井玲華です』


静寂の中に広がる感嘆の声音と空気が私を包み込んだ。

明和女子高等学校。
古くからの歴史と伝統とを兼ね備えたその学校の名を知らない者はおらず、地域社会での地位も高いものである。
男子に負けぬ統率力。絶対的な権力。禁忌さえ感じられる程の純情空間。高貴なオーラさえ出す、その高校で実質的なトップは校長や教師等の大人ではない。

その場でのトップに君臨するのは一人の少女。

それが、櫻井玲華であった。

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