立海との交流会は、流れ通りに進められた。相変わらずに冷静な判断をする柳君。風紀委員の所に座っている真田君の視線と、その隣にいる柳生君の視線に気付き、小さく頭を下げると、彼らは律儀に頭を下げ返してくれた。

時折、妙にじろじろと見られている気もしないことも無かったが、おそらく女が会長を勤めているということが珍しいのだろう、と決定した。
奇異の目で見られるのは、悲しき事に跡部の家の血筋をひいて生まれてきたものだから慣れている。まあ、今の私にはその名前を語る程の身分など微塵も無いのだけれども。

交流会も終わり、各々の委員会ごとに会話を交わしていたとき、不意に視線を感じてそちらを向くと、廊下の向こうに私のことを激しく睨んでいる少女達が見えた。

その視線があまりにも痛々しいものだったために、首をかしげると同時に、何故だか勝手に体が反応していた。


『すいません。少々お手洗いをお借りします』

「あ、どうぞどうぞ」


立海の会長さんに一言そう伝え、私は交流会室を後にし、その少女たちのところへと足を進める。
不思議な事に、時折不意に誰かに呼ばれている気がした。おかしい。この学校は、どこか懐かしく感じるのは、以前通っていた学校に似ているのだろうか。それとも、少しの間だけ通っていた四天か。そんなことを考えつつも、歩いていた時、ぶぶぶ、とバイブ音が響いた。

電話の向こうの相手が、瞬間的に浮かんだ。だけど、それを拒否することはなんだかしたくなくて、通話ボタンを押したと同時に聞こえてきたのはノイズ。
それと。


「イマスグタチサレ」


まただ。またこの声。女かも男かも分からないこの音。震える心と体を必至に押さえ込んで、私は大きく息を吸い込んだ。今の私は、「会長」としての櫻井玲華だ。だから、誰かに恐れるわけには行かない。胸元の金色のブローチを小さく握り締めて、息を吸う。


『何が目的なの。一体私になんの恨みがあるの』


そして、貴方は誰なの。


「キエロキエロ」


駄目だ。このまま聞いていては、私までおかしくなる。せめて、聞かなければいけないことは。


『貴方は、あの事件について何か知っているの?』


その言葉が相手に伝わることはなく、ただ無機質な音がまた響いて通話は途切れていた。気味の悪いその音に瞳を閉じた、時。



「櫻井さん」


柔らかい音がして、そちらを向くと芥子色のユニフォームに身をまとった幸村君の姿。
彼は、優しげに微笑みをこぼしながら私に近づくと「交流会は終わったのかい?」と首をかしげた。中世的な顔立ちをした彼のそのオーラは、どことなく景吾にも似ている気もした。


『いえ、少し席を外していまして』

「ふふ、そんなに堅くならなくていいのに。一度会った仲じゃないか」


そうだろ? と同意を求めながら彼が目を細める。その仕草があまりにも愛おしいものを見るものだったからだろうか。私の心音が小さく一つ高鳴った。喉の奥がちりり、と何かを伝える。











第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -