立海大附属高等学校は、氷帝に比べると規模が小さいのだけども、世間一般的には大きな所だ。
バスから降りて、大地を踏みしめようとした時、何処かから視線を感じた気もしたが、特に気にもせず降り立つ。きっと、電話のせいで敏感になってるんだろう。
そんなことを考えながら交流をするわけにもいかず、とりあえず息を吐いた。
ちょうどその場所に立海の会長らしき人物がやってきた。優しそうなその男の会長は、春会の時に記憶していた人物だ。
「ようこそ、立海へ」
そうやって笑う会長さんは、私の顔をまじまじと見つめてきた。
『あ、の、私の顔に、なにか?』
「い、いや、なんでもっ、相変わらず綺麗だと……」
『相変わらず? 春会以外でお会いしましたか?』
「い、いえ、あ、あの」
『櫻井』
被せるように聞こえた声に目をやると、そこには何故か険しい顔をした柳君の姿。
一体なんでそんなに険しく表情を歪めているかは分からなかったけど、どうやら向こうも向こうでいろいろあるらしい。
柳君は、私の目線に気づくと、口元を、小さく色どった。
「長旅で疲れているところだろうが、平気か?」
『ありがとう。私は平気だけど、役員が少し疲れているみたいかな』
小声でそう、伝えると、彼は和らげに微笑み、「部屋に案内するとしよう」と言い、会長を引き連れ歩き出した。
だけど、何故か私の胸は異様な程に高鳴っていたことと。
「平気、か。櫻井」
『うん。あの。もしかして……そんなに疲れてるように見える?』
「……いや、少し心配症なだけだ」
その後も柳君が、何度か数えきれないほど、私にそう尋ねてきたことだった。そして、流れる景色の中、私達はその部屋にたどり着き、交流会が始まった。
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