その電話は、その日から毎晩かかってくるようになった。着信拒否の設定をしても意味がない。
相手は、公衆電話からかけてきているのか、非通知で、私がそれを阻止することなんてできない。

さすがにそれが1週間続いた頃には、疲労と気味の悪さとで、まともな感情が消えてしまいそうな気がした。
だけど、上に立つものとして、弱い面を見せることは、逃げることのような気がして結局それを誰にも相談することもなく、誰にもばれないように笑顔を張り続けた。

そんなある日のことだった。立海からの交流会のお誘いが来た。

旅費などは学校が出してくれることになっているし、事務的な手続きも済ませてしまい、資料も作り終わる。
その間にもかかってくる電話。
重なる仕事、疲労、精神の恐怖。

そうこうしているうちに、立海との交流会の日になってしまった。


『……行かない、と』


電話の電源を切りたい衝動を押さえて、それを出来ない私はいったい誰からの電話を待っているのだろう。

電話を留守電設定にしようと思い、電話機に近づいた時。また、音が鳴る。


『っ、……』


今までは夜にかかってきていた電話が、今日は朝からかかってきた。それだけで恐怖というものがこみ上げてきて、それが切れるのを待つ。

だけど、それは消えず、仕方なく受話器をとり。


「立海に近づくな」

『え…………』


リッカイニチカヅクナ。
それが私の耳の中を縦横無尽に跳ねる。


「幸村精市はお前を憎んでいる。立海はお前を憎んでいる。お前を憎んでいる」


憎んでいる?
チカチカとしだした視界。
どうして、どうして彼らに憎まれているのだろうか。

私は、彼らと干渉したことなどないというのに……。
いや、違う。
私の中の何かが叫ぶ。


『私は、彼らと……会った事があるの……?』


しばらくの無音の後。
ぞくりと、悪寒が走った。


「記憶をなくした哀れなお姫様」


ぶつりと。そこで電話は途切れた。













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テーマ「人外ファンタジー」
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