桜の花は、もう花弁を散らしてしまった。
春が儚いのは、桜の花が儚いからだろうか、なんて一人でに小さくこぼした呼吸音は、若葉の中に溶け込んでいく。

あの後、結局、景吾に話を中断されたために、あの人とはきちんと話せなかったが、春会自体は良い雰囲気を残しつつ終わった。


「では、春会は終了する」

『皆さん、お気をつけてお帰り下さい』


青学、立海の両校が自分の学校に帰るのを見送り、その片付けを終わらせる時にもどこか機嫌が悪かった景吾。
別に、私は不愉快にさせるようなことはさせていないのだけれども、と考えたものの理由は分からない。
私の従兄妹はたまに、機嫌がものすごく悪くなるけど、決してそれを全て理解しているわけでもないから困ったものだ。

とにもくにも、いつまでも過去を振り替えるわけにも行かない。


「会長、今月の会計予算なんですけど……」

『ああ、それはこちらに頂戴』

「あと、こっちは、生徒総会の資料の確認をおねがいいたします」

『分かった。確認しとく』


資料を机に積み重ねていきながら、押印を押していた時、生徒会室に設置してある校内連絡用の電話が鳴った。


『はい。こちら生徒会執行部』

「ああ、櫻井さん? 立川さんはいる?」

『え、ああ。いますよ』



そして、早苗に電話をかわると、しゃべりだした彼女の顔がだんだんと赤くなったり冷めたりと豹変しだした。電話を静かにおいた彼女は、一つ吐息を吐いた。


『……ど、どうしたの?』

「……玲華……ちょっと、外に行かない?」


いいけど、と返したその3分後。


「早苗―、会い来たでー」

「学校に来ないでって言ったでしょ蔵っ」

「会いたかったんやー」

「大声で叫ばないで!」

「無理や。愛は止まらんでっ」


……。ああ、また始まった。
早苗と白石君のいつも通りと言えばいつも通りの掛け合いを見ていると、謙也君の声がした。今日はどうやら白石君だけじゃないらしい。いつもは、白石君が一人やってくるのだ。
……まあ、学校に来たのは初めてだけど。謙也君は、その白石君に付き添いでやってくることが多い。この間会ったのは、ちょうど先月だ。



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