それからというものは、妙にあっけないものだった。
義母様は、逮捕された。名目は姦通罪。つまり、義母様は他の男と浮気をして、その男の嫁から訴えられたというものだ。それに「脅迫罪」が重なったのは言うまでもない。彼女は一人の少女を長い間「主従」という鎖で縛り続けてきたのだから。早苗の命を奪った罪は大きい。もちろん、その場に居合わせた私も警察に赴きすべてを吐露した。
だけど、人体実験のことはすべて伏せた。口にしたのは、早苗という友人が、母の愛を求めたということと、その母があまりにも無慈悲であったということだけ。
いずれ次第に全てが明らかとなる。日本の警察もバカではないのだから。だけど。



『これで、よかったのかな』



跡部家の敷地とはかけ離れたとある墓地で彼女を埋葬した。その墓石に刻まれた早苗に向けて語りかける。
神崎さんが言うには、あの実験グループは全て裏ルートで取締りを行われたらしい。警察の目に触れてはまずいことがあるのは理解できたが、それもいずればれてしまう。時間の問題ということだ。
全てがばれた瞬間に、私はどうなるんだろうか。人体実験なんて海外では珍しくもないことかもしれない。だけど、きっとその事実がばれたのならば私は孤独になるんだろうか。今まで以上に嫌悪に満ちた目で見られて、ののしられるんだろうか。
それ以上に、けいごは?学校は?でも、それはどうにかなるとして、残るのは。



『……結局、私だけ』



取り残されちゃったね。寂しい。一人になってしまった。
孤独が怖い。もう誰もいない。みんなみんな、いなくなってしまう。
神崎さんは今回の始末のために海外に。けいごは跡部家で情報拡散を防ぐための措置をとるために動いている。いつもずっと一緒にいた早苗は、……もういない。



『誰もいない。……誰もいない、よ』




その声に。



「そんなことはないよ」



重なったのは、声。



『っ、ゆ……きむら、君』
「やぁ、久しぶりだね」


真白のシャツに身を包んだ彼は太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。とてつもなく美しく見えるのはきっと錯覚なんかじゃない。彼自身のオーラとでもいえばいいのだろうか。とにもかくにも、彼が、彼がここにいる。


「なんで、って顔をしているね」
『……あの』
「跡部から聞いたんだ。どうしても、君に伝えたいことがあったから」


前から思っていたが、彼の声音はハープを奏でているような音に似ている。聞いていて心地よいけど、私には少し美しすぎて、儚すぎて聞くに堪えない。










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