「……で、お前はわざわざ玲華を口説きに来たわけじゃねえんだろ?」


景吾のその一言で、私は我に返ったように×さんの存在を思い出し、とっさに景吾の体から離れようとした。だけど腕の拘束は思ったよりも強く、起き上がり人形のように不自然な動きをした私の前で神原さんが、少し顔を曇らせた。



「もう、終わらせようと思うんだ。これ以上、玲華のように傷つく人間を出してはいけない。そのために俺は、今日まで海外へ渡航し彼らの動向を探ると同時に会社を立ち上げ、彼らの実験を止めさせるための計画を見いだした。……そこで……玲華の力が必要なんだ」
『……私、の?』


瞬きをした私の体を景吾がきつく抱きしめた。



「あーん? そんなもん調べ上げて捕まえればいいだろうが。玲華を使う必要がどこにありやがる」
「俺なりに彼らのことは調べ上げた。情報ならばある。今の日本の警察の力と俺が海外で立ち上げた会社の情報網さえあれば、彼らは確実に捕まえることができる。しかし、……君に確認をとっておかなくてはならないと思って」
『……私に?』


そこで、また神原さんは少し目線を落とした。
確認をとるとはどういうことだろうか。研究チームが研究内容を警察に話せば、私のところにマスコミが殺到するが大丈夫か、という類か、と聞けば彼はそれには首を横に振りながら「そんなもの俺がどうにかしてあげよう」と微笑んでくれた。……景吾が少し不機嫌になった気もした。
そうではないなら、何を確認するというのだろう。
首をかしげる私の前で、神原さんは、そっと口を開いた。


「君のよく知っている人物が、かかわっているんだ」
『私の?』



首をかしげ私の前で彼は、心底申し訳なさそうに眉をひそめた。いったいなにがあったんだろうか。そんなことを瞬時に感じた時だった。








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