傍にいれればそれだけでよかった。
大好きな人と、誰よりも愛しい時間を過ごせればそれでよかった。
そんなことを言うには私はあまりにも人を殺しすぎている。それは俺も同じだよ、と言いながら体を抱きしめてくれる銀時のふわふわとした髪の毛に手を伸ばしたい。だけど、彼の腕の力が思いのほか強くて、私の腕は彼の腰の辺りを抱えることしか出来なかった。


『どうしたの銀時』
「……なんでもねえよ」
『銀時は嘘が下手だね。そんなんじゃ、浮気したらすぐばれちゃうね』
「俺は皐月一筋だから関係ねえの。だから嘘も下手でいいんだよ」


なんでそんなこと簡単に言えちゃうんだろうこの白い男は。白夜叉なんて言われているくせに、銀時は誰より憶病だ。憶病で、弱くて、あまりにも危うい。だからこそ彼は、刃を止めることなんてない。ただひたすら、自分に後悔しているから。ただひたすら、何かにとりつかれているかのように。きっと先生のことがあるからこそ、彼は鬼なんだ。人間としての自分を恥じているから、彼は夜叉なんだ。
彼の背負っている重みは、なんて痛々しいんだろうか。そんなことを何度も考えた。
そんな彼が私の体を優しく抱きしめてくれるたびに泣きそうになる。人を斬ったのと同じ手で私を抱きしめてくれるから、愛おしくなる。



「なんで俺が生き残ったんだろうな」
『……そんなの知らないよ。……でも私は銀時がいてくれてよかった』
「なんでだよ」
『こうやって。……抱きしめてくれるから』


そうやってその胸に安心したように体を預けると彼は「馬鹿な男にひっかかったよね、お前も」なんて苦笑した。そうだね。馬鹿な銀時。きっと私がこれから考えていることも、起こそうとしていることもわかっていないんだもの。そっと胸板を押すと彼は優しく解放してくれた。

『そろそろ行かないと。ほら、敵さん来ちゃう』
「……そうだな」
『また、会えたらいいね』
「後世でね、とか言ったら許さねえぞっ」
『あはは、銀時必至だね』
「……おい」
『大丈夫だよ。そんな簡単に死んだりしない』


嗚呼、嘘をついた。
私は今から死にに行くのだ。
この体がもう使い物にならないことは自分が一番分かっている。だからこそ、最後まで戦いたい。彼のいるこの戦場で。


「じゃあ、またあとで合流だぜ」
『了解』


ごめんね、銀時。私は、馬鹿だね。きっと貴方を悲しませるし、深い傷を負わせる。こんな時代だから愛し合えなかったのかな。ううんきっと違うの。永遠に傍にいることだって出来た。それこそ、彼のことを街で待っていたら、戦いを終えた貴方と添い遂げることだって出来たんだろうって思うの。
だけど私が選んだのは、そんな永遠じゃないの。
私が望んだ永遠は、来世で願うことにしようかな、なんて。
使い物にならないような体を引きずりながら私は最後の一太刀を振るった。



ーーーー
突発的に書きたくなった。



永遠と呟いてみたら


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