(現パロ)




「会いたい」


そんな色気もなんもないメールが来たかと思ったら、生徒会室の扉がいきなり開いて、ずんずんとなんの遠慮もなく入ってきた後輩が一名。普通の生徒ならば萎縮して入ってこないその場所に入り込んできたその男は、イスに座ったままの私にそのまま抱きついた。


『ぎゃっ、ちょっ……濡れてるじゃんっ』
「……色気無い声だね」
『煩いよ馬鹿総司。イマスグにでも職員室の土方先生に電話してやろうか』


どうやらそれは嫌らしく、腕の力がまた強まった。私を背中からがばりと抱え込んでいる状態の総司の顔は見えないけど、茶色の髪先からぽたぽたと雫が落ちてくるのがなんだか色っぽくて、私は顔が見えないのをいいことに赤い顔をしたまま彼に問う。


『どうしたの? なんか嫌なことでもあったの?』
「……」
『大体なんでびしょぬれなの? 風邪引くよ。タオル貸そうか?』
「……」
『……ちょっとぉ……総司ぃ……』



返事の代わりにまたぎゅうと腕が強まった。駄目だ。これは、いくら何を言っても聞いてくれないパターンだな。そう判断した私は、とりあえず資料が濡れないように、自分の机から遠くに置きなおして、周りを安全にした後で彼の頭を撫でた。


『……大丈夫だよ。私はどこもいかないよ』


台詞に反応した彼は、ゆっくりと顔を上げて力なく微笑んだ。たまにこうやって不安定になる彼が愛おしいから、そのときは私も存分に甘やかしてあげるのだ。いつもは飄々とした目で私のことをからかうその年下の男の子は、どうも私の心を掴むのが上手くて困ってしまう。それでも嫌いになれないのはそれほどに私が総司におぼれている証拠。そんな私の心を読んだのか、やっと彼が声を出した。


「……ごめんね、先輩びしょびしょ」
『まあ、総司だから許す』
「でも僕は茶色よりもこの間のピンク色のほうが……」
『なに勝手に人のブラを見てるのかな君は』


へにゃりと笑いながらも「なんでだろうね」とか言うものだから、結局私は彼を突き放せない。まあ、これが俗に言う惚れた弱みってやつなんだろう。そんなことを独りでに納得してまた彼の頭を優しく撫でてあげるのだ。



濡れた髪


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