あの有名な木の下で告白を受けている幸村の姿を屋上から見ながらとてつもない虚無感に襲われる。ほら、やっぱりね。だからこの間二年の有栖川さんは幸村のことが好きに決まってるから、って忠告してあげたのに。その時、別に興味ないし、とか言ってバッサリ魔王オーラ全開だったくせに。そんなに困った顔しながら相手の涙を拭う幸村なんて、気持ち悪くて笑える。
馬鹿じゃないのあの人。そうやって優しい態度取るからまた惚れられちゃうのにさ。それなのに、告白されて困るとかマジありえない。それともわざとやってんの? 優しくすれば女の子なんて簡単に落ちるって分かっててやってんの?
もう嫌だ。こんな考えしか出来やしない愚かな自分が嫌だ。やめてよ。幸村、馬鹿でしょあんた。ほら、言わんこっちゃない。そんな優しくしてたら抱きつかれるのなんて当たり前じゃん。女の子はずる賢いんだよ。男の子がどうやったら困るのかも、どうやったら嬉しいのかも本能的に分かってるんだよ。涙なんて、簡単に止められるのに、構ってもらいたくてガンガン流してるんだよ。
だから。だからだから。


「私のほうが好きだよ阿保幸村あああああっ!!」


屋上から大きな声で叫んだ。
あ、二人とも上向いた。それに幸村が、あの神の子がぽかんと上向いて口開きっぱなしで唖然としてる。うわー、アホヅラだ。でも、次第に自分のしたことが恥ずかしくなってきて、私はとっさに屋上から逃げた。
向かう先なんてなかったけど、偶然に、「お前あんなことするなんて本当馬鹿だよね」とか嗤いながらも抱き締めてくれた幸村の所にたどり着いたのはなんでだろ。



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