このか細い腕で掴めるのは果たしてなんなのか。なんてそんなことを聞かれても困る。第一君の力で何が出来るかなんていうことを知っているのは俺でもなければ君が世界で一番愛おしいと思っているであろうあの人でもない。君は彼にとてつもない妄想と期待とよく分からない希望を抱いているみたいだけど、彼も人間なんだよ。君がこれからどうなっていくかなんて知るわけがない。


「そう、誰も知らないんだよ」



そんなことをぼんやりと諭してあげるのにきっと内海の耳には聞こえていないんだろうな。
結局くだらない自問自答を繰り返す君のその視界に広がっている世界はどんな色をしている? ほら、こっちから聞いたら答えに困るくせに、誰かに助けを求めようなんておこがましい。

だけど。


「俺がいるだろ。お前は一人じゃない」



それでもその腕を掴んでしまうのは果たしてなんの情なのだろうか。
愛情、同情、それとも。ほら、今度はこっちまで分からなくなってきた。いっそのこと二人でわけも分からない迷路に迷い込んで馬鹿みたいに泣きじゃくるのも悪くないかもしれない。そんなことを考えながらまた俯いてしまったその小さな唇にどちらのかも分からない雫が落ちた。




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