幸村精市って名前の書いてある鞄棚をちらりと見ただけでなんかなんだか幸せになる。

そんな放課後、帰ろうとした時に玄関でひらりと辛子色の布がはためいた。キラキラした色の夕日が綺麗で、なにもかもがどうしようもなく色づいて見えた。

私の片想い人。
麗しい幸村君。

だけど、「さようなら」って言う勇気は無くて、「待って」っていうほど口達者じゃなくて。ただ見つめる背中が不意に振り返った。


「そんなに見られたら穴が開くなあ」

「……え」


してやったり顔をしながらも、綺麗に微笑みを浮かべる王子様。
瞬きをした私の前で、緩やかに手を振る幸村君。


「暗くならないうちに帰るんだよ??」


ゆっくりと紡がれる言葉にただ頬を赤く染めて、頷いていると翻って外に向かう姿。
今日もまた君に惹かれて、きっと明日も明後日も好きになる。

だけど、気づかれないようにひそやかに幸村君を想うこの時間は嫌いじゃないんだもん。


ただ片想い



君を想うことが出来たら幸せです。

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何となく片想いを書きたかっただけ



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