ただ好きだったよ。
君のことが、ただ好きだったんだよ。
痛いくらいに優しくて、泣きそうになるくらい愛をくれた君が誰よりも好きだった。
君は覚えてるかな。あの日の約束。


『大人になったら、二人で飲みにいこうね』

『お前は酒に弱そうだな』


そうやって笑って歩いたこと、きっと忘れてるだろうね。
いいの。それでも私は構わない。だって、私と君を繋ぐ唯一の印しはまだ君が持っているから。


『そうか、ゆっくりと読ませてもらおう』

『うん。返すのはいつだっていいからね』


君にあの日貸した本の題名は、柳君と私を繋ぐ合言葉。
律儀な柳君は、いつかそれを私に返してくれるだろうね。
でもその本は、いつまでも君が持っていてほしいな。
そしたらいつの日か、その本を口実にして、柳君と再び会うことが出来るから。

不器用で、意地っ張りで、結局君に好きだって言えなかった。

いつまでも、君のことが好きだよ。
だからね、だからね。

いつか再び会うことが出来たその日には、二人で写真を撮って欲しいの。

あの日、撮れなかったから、なんて理由つけても許してね。
君の笑顔が、優しさが、いつまでも私の中で香り続けて、その先に、幸せな日々が待っていればいいな。

ねえ、大好きな君。
私は幸せだったよ。

次に会う日はいつになるか分からないけれども。

それでも。
君に出会えたこの瞬間の奇跡は消えないから。



そして私達は旅立った


君がいつまでも、幸せでいてくれますように。





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最後まで意地っ張りな私だったけども、君が大好きでした。





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