朝の練習の最中に、昨日残しておいた洗濯をたたむのを終えてしまおうとたんたんとした作業を繰返していれば、気付けばそこに幸村。

……って、いつからいた君!?
……まあ、いいけど。



「ねえ、内海」

「なんでしょう幸村君」

「好きだよ、愛している。もう、今すぐにでも結婚したい。というか、君との子供が欲しい。いいよね。ああ、心配しなくても、ちゃんと明日も部活に支障が出ないように優しく抱いてあげるから、だいじょ……」

「ごめんけど、変態発言控えてくれる?」


こっちとて忙しい。
毎朝、飽きないのかというくらいこの台詞を繰返してくる幸村の相手なんてもう慣れっこだ。

いつもならば、ここで「ふふふ、またお昼ね」って言って引き下がってくれるのに、どうやら今日は違う。

タオルをたたむ私の手を掴んだと思えば、おもむろに私の左指の薬指にクチビルをつける。


「いっ……」


なに。今、ちっくりってしたんだけど、何事。
なんて思う暇も無く、開放された指とニッコリ笑顔の幸村。


「今はまだ、そんなものしかやれないけど、許してね」

「いや……いやいやいやいや! あんた頭大丈夫!? どこの世界に、付き合ってもいない女の子の左指の薬指にキスマークつける男がいるわけよ!」

「……ここ?」

「ええ、そうですね! 私が悪うございました!」


ああ、困った。
もともとあまりやけていない私の白い指の付け根に、赤い跡。

虫刺されなんていっても絶対勘のいい奴は気付くだろう。
たとえば……。


「ほう、精市。ついにそこまでこぎつけたか。祝言をあげようか」

「ありがとう蓮ニ。今なら俺、全国制覇なんて3秒で出来そうだよ」

「なに!幸村が結婚だと!? それは実に喜ばしいこっ」

「今度から三強じゃなくて、三馬鹿って呼ぶよ?」


ああ、めんどくさい。
なんて思いつつも、こんなに愛されているなんて、私は幸せだな、なんて思った時点で私の負け。


「ね、君は俺のものにならないといけないんだから、早くうなずきなよ。そしたら、もっともっと今以上に愛して上げられるよ?」

「いや。いいです」


これ以上貰ったら、死ぬ。
と心の中で呟いた瞬間にくすりと笑った幸村に数日後美味しく頂かれました。


『これ以上いりません』




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積極的な精市君とツンツンマネ。


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