「ねー宍戸」

「……一応、お前の先輩なんだが」

「じゃあ、りょーうっ」

「じゃあの意味が分からねえよっ」


ああ、今日も私の宍戸先輩は、ツッコミが早い早い。
流石だなあ。しかも、なんか頬っぺたが赤くなってる所が、キュン死にしそうなくらい可愛いなあ。

あ、帽子被り直した。
あれって、宍戸先輩が照れてる時の仕種なんだよね。
可愛い可愛い。
ぎゅっってして、家に連れて帰りたいくらい。

あ、また打つのかな。
さっきから私に背中向けて、ラケット振りまくってる宍戸先輩の背中は、私が抱き着くためにあるんじゃあないかってくらい男らしい。


「だから温泉行きましょっ」

「意味が分かんねえぞ!! ってか、ちっ、近いぞ!!」

「なんでですかー。いいじゃん。今日は、風呂の日ですよ」

「ああ?? 風呂……?」


2月6日だから風呂です。
って胸を張って言ったら「馬鹿か」って頭を小突かれた。
なんでよー。
こんなに私は暇してるのにさ。


「他の奴誘えばいいだろ」

「…………忍足せんぱー」

「あああっ!! 分かったよ! 行けばいいんだろ!!」

「やったあっ」


嬉しくて抱き着いたら、やっぱり「近い」って言って怒鳴られたけど、そんな赤い顔で言われたって、意味ないんだから。


「混浴がいいっ」

「却下だ」

「えー」


不満げに言うと、軽くため息をついた宍戸先輩は、帽子を脱ぐと、小さく笑った。


「……お前が行きたいっつってた店に連れて行ってやるから」


ほら、そういう顔されちゃうからまた好きになっちゃうのになあ。
「先輩大好き」って言ったら、また帽子を被り直した先輩の後ろ姿に、果てない愛を誓いましょう。

声に出さずに「あいらぶゆう」
声に出して「あいらぶゆうっ」




『背中に叫びましょう』


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公言通り書いたぜ宍戸さんっ!
2012・2・6



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