いつだってそう。いつだって。


「のう」

「何ですか」

「なんで今日眼鏡なん??」

「気分です」


あ、今の顔初めてみた。
詐欺師ファンに写真売ったら高く売れそうなくらい。


「……のう」

「お次は何でしょう」


おっと危ない。気を抜くわけにはいかない。というか、気を抜いたら負けだ。むすりという顔をしたのをいいことに仁王は私に詰め寄る。


「なして髪切ったんか?? そんでもってなして七三分けなり?? って、それより前に喋り方も、変わっ……」

「全て気分です」


ああ。気分がいい。
あの仁王雅治をこんなにアッサリとあしらうことが出来るなんて。
腰まであった髪を切ってよかった。眼鏡を買ってよかった。
……だけど……。


「お前さん……やぎゅーみたいやの」


そう言って何処か幸せそうに笑う仁王が嫌い。
ほら、結局はそう。
君は私なんか見てくれない。
何がパートナーよ。
何がイリュージョンよ。
馬鹿みたい。
だけど、この後「今日も好きじゃ」って言われることを予測しなかった私はもっと馬鹿みたい。




『だって君は』



−−−−−−−−−−−−−
紳士に妬いて、紳士と同じ風貌になった女の子。



- ナノ -