とある休日。暇な一日がいやで、彼氏である柳の家に遊びに行ったはいいものの、柳は私をオール無視して本を読んでいる。


「やなぎー、ひ」

「暇でしょうがないよー、とお前は言う」

「遊ぼう」

「お前は遊びに来ているはずだが??」


それはそうなんだけどさ。……なんか、私がほぼ空気なんだけど。
ねえ、そう思わない?? って言ったんだけど、柳は「そうか」って言っただけ。

そればかりか、また本に目をうつし、あろうことか私に背を向けてしまった。

え、何。これってイジメ??
イジメだよね。彼女に対するイジメとしか考えられないんだけど。

たしかに私が無理矢理遊びに来たけど!! 「暇だから行っていい?!」って言ったら「構わないぞ」って言ったくせにっ。

そんなにそっぽむくって何事よ。まるで、本のほうが愛されてるみたい!!
そう考えたら、体が動いて、広い背中に抱き着いていた。


「あかり?」

「本じゃなくてっ、私、もかまってよ……」


言っててかなり恥ずかしい、と思いつつも、「淋しい」って言った瞬間に、視界が反転。
目の前に柳の綺麗な顔と、彼の後ろに見える天井。


「え、あう……や、な……」

「俺と一緒にいる空間でお前を放っておけば、普段は甘えないお前が素直に甘えてくる、というデータは正しかったようだな」


ニヤリと口許を歪めた柳に、嵌められたと築いた私の唇はすでに彼のモノ。

今日の暇はどうやら、彼のデータによるイジメだったらしい。
ああ、そんな意地悪な柳も好きな私って重症。





『策士の一言』





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