『えー、……こほん。何言うとるねん宍戸。部外者言わんといて』
「忍足の真似をすん、な、よ」


思いっきり叫んだが、語尾が小さくなるのはあいつが、亜衣子が通う女子校の高等学校の生徒会長であり、亜衣子が何故かあいつに懐いているからであって……。
氷帝学園の姉妹校。そこの生徒会長であり、跡部の従兄弟であり、何故か忍足の声真似をするこの女はゆかという。……よりにもよって、コイツまでくるなんて。


「ゆか、お前何しにきたんだよ」
『ん?私の可愛いかわいい亜衣子を抱きしめにきたの、ね亜衣子』
『お姉ちゃん〜』
『あー、可愛い。このまま私の妹にしたい』

 
現在進行形で変態発言をするゆかの横に、忍足が立つ。


「お嬢さん。ますます俺の真似に磨きがかかったなぁ」
『……ストップ。それ以上近づいたら亜衣子が妊娠する。ほら、亜衣子。すごく不愉快ではあるけど宍戸のとこに逃げてたほうがいいよ』
「酷いわぁ、でもそんなところが、ますます……」
「ユーシ気持ち悪いぜ!」
「そないこと言わんといてや、がっくん」


忍足はやれやれ、と両手をあげつつ息をつき、ゆかに再び近づこうとしたが、すたすたとゆかが歩いていった先は、跡部のところだった。従兄妹だってのに、そんなに顔は似てねえ。似てるところといったら、人の前に堂々と立っておかしなことを悪びれもなく言えるとことか。……まぁ、あとは認めたくはねえが、責任感の強さぐらいだ。こちらに来た亜衣子の頭を優しく撫でながらぼんやりとそんな結論を出してみた。


『けーご。亜衣子着替えせたから私の任務終了でしょ?』


……ん?待て、あいつわざわざこの瞬間の為だけに休みだっつうのに律儀に制服きっちり着こなして、やって来たつうのか……。相変わらず、変なところで跡部に似ているというか……。


「まあ待て。お前も俺様の美技を見ていきな」
『はいはい。でも残念ながら体操服なんてものを用意してないから帰るね』
「俺の体操服を貸してやる。それともユニフォームがいいなら、ここで脱いで貸してやる」


そう言いながら優雅に跡部が髪を払う姿に何人かの女子が卒倒した。しかし、至極冷静に溜息をついたゆかは、首を横に振る。


『身長差を考えて。あんたの体操服なんて着たらぶかぶかでしょうが。それと同時に私の生命の危機を考え……、うわっ』
「跡部、これどういうことだい」


ゆかの髪をひっぱっているのは、にっこりと微笑んだ幸村。やべえ。これはまずい。奴の後ろに真っ黒なオーラが見えた。




9章


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