「……今の声、榊監督、か?」
いや、あの人何を考えてやがる。今から俺らは普通に授業があるわけで、第一いきなりの変更にクラスの奴らが従うわけ。
「いくぜてめえら」
「きゃー跡部様っ、ついていきますっ」
嗚呼、やはり俺の感覚はおかしいのだろうか。跡部の後を着いていく女子及び、何故か乗り気の男子のクラスメイトや他のクラスの奴らの背を見ていると、腕にほんのりと温もりを感じた。
「亜衣子」
『お兄ちゃん。行かないの?』
どこか俺を心配したような不安げな瞳。俺は、その不安を和らげるように微笑んで、行くに決まってるだろ、と付け加え握られている手に優しく力を込めた。
「……それにしても、なにがあるってんだ」
体育館と呼んでいいのか、それとも何処かのアリーナと呼べばいいのか。氷帝学園の誇る体育館は、全校生徒が集まったというのに、まだ有り余っている。広すぎる環境は、スポーツをしている俺としては満足だが、何も知らねえ奴が来たら間違いなく迷子だ。
氷帝学園の全生徒が集まった体育館に響いたのは、もちろんと言っていいが跡部の声だった。生徒会長でもある跡部の声がしたのと重なるのは黄色い声。
「お前ら、準備はしてきただろうが、今から部活動対抗ゲームを始める。今日は特別ゲストも読んでいるから、せいぜい楽しめっ!」
今あいつはなんと言った?部活動対抗ゲームだと、今から?第一、練習着であるユニフォームはあるが、体操服を用意してねえ……って其れより前に、突然にも程がある。これにはぜってー不満の声が上がるはずだ。
「は?跡部いきなり何をっ」
「楽しみだC〜」
「じ、ジロー?」
「宍戸さん、頑張りましょうね」
どこからか長太郎が走ってきた。長太郎は、どこか嬉しそうににこにこと笑いながら俺のところで話し出す。
「待て、お前おかしく感じねえのか?第一俺たち体操服を…」
「それなら心配いらへんで。部活動生はユニホームやねん」
「そうだぜ宍戸っ、お前連絡きてねえの?」
朝連絡まわってきただろ?と言う向日は、いつの間にかもうユニホーム姿で、忍足にいたっては手にラケットまで握ってやがる。
待て。俺に連絡なんて……。
おいおい、一体なにがおこってんだよ。
7章
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