『あの、ね。その、大丈夫? 顔赤いよ』
「っ!」
 
やばい。やばいやばい。その声と目と手と……っていうか、すべて反則だろ!自分の妹と思えねえくらいの殺傷能力。やべえ、こいつの可愛さの成長があまりにも底知れずで怖え。俺は、顔を赤く染めつつ上ずった声で「大丈夫だ」と答えた。


「……シスコン」
「黙れ魔王」
「……はぁ、朝からいちゃついちゃって……フフフ……君を見てると本当イライラするよ」
「そう思うなら神奈川帰れ」


しっしっ、と手で蝿を払うような仕草をするも、こいつは全く動じない。嗚呼、面倒臭い従兄弟を持ったものだと今更ながらに後悔する。


『お兄ちゃん』


しかし、こいつの天使のスマイルがあるから、まあいいか。なんて思えちまう自分の甘さに反吐が出そうになりながらも顔がにやけそうになるのを抑える。寝起きの微妙にかすれた声が、なんか可愛さに拍手かけてやがる。


「気持ち悪いよシスコン」
「うっ、うるせえっ幸村! ところでどうした?」


やべえ。今、幸村がいなかったら、このまま理性がプッツン、といっていないと自信をもって言えないほどだ。いや、こいつの声を聞いて何にも感じない男は男じゃねえ。まあ、何かを感じた瞬間にそいつら全員ぶっ飛ばすけど。亜衣子は、小さく眉をひそめて俺を見つめる。
身長差があるせいで、自然と上目遣いになるこのアングルは朝からは危険だ。微かに潤んだ瞳とか、寝起きのまだぼんやりと焦点の定まっていないようで俺をしっかり見つめているところとか、嗚呼マジで可愛い。可愛すぎてやべえ。
そして、小さく申し訳なさそうな声が漏れた。


『時間、大丈夫?』


時間。時間。時間、か。


「ん?じか……あああ!やべっ!亜衣子、行ってくる!」
『え、あう、行ってらっしゃい』


俺は目にも止まらねえ位のスピードで家を飛び出し、学校に着くまで息をつく事もなく走り抜けて、見事チャイムが鳴り終わる前に校門をくぐる事に成功した。いつもならば引っかかる信号もなんなくクリア出来た俺の運の強さを褒めてほしいくらいだな。
そして、そこで……重大なミスに気がついた。


「……やべえ……亜衣子を、魔王と一緒に、おいてきちまった……」


これ、絶対絶命だ。



2章


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