不意に、隣でぼんやりとしていた精市が声を上げた。


「本当、嫁姑問題みたいだよね」
「おや、精市。俺の話を聞いていたとは意外だな」
「どうしてだい」


きょとん、と首をかしげた精市の藍色のウェーブがかかった髪が揺れる。 
今、精市を眺めていた女子が三人倒れたことは、黙っていよう。俺は、ノートをとっていた手を少し止めて、彼を見る。


「いや、お前はてっきりお前の彼女のことを考えているものと……」
「彼女ってなんのこと? いやだなあ柳。そんなの俺にいないけど」
「……よし、話を続けよう」


困ったのはどうやらウチの部長も同じらしい。仮にも仲間に対して、そのように黒いオーラを出すほどに何かがあったことは明白。頭痛は気のせいという事にしておきたい。
まあ、それはおいておくとして……。
現在、俺達の目の前では氷帝学園のテニス部とバスケ部の試合が行われている。その競技はバスケットボール。世間一般的に考えた際には、毎日の部活を行っているバスケ部の圧倒的有利。データとしてもそれは当たっているのだが。
問題は、テニス部のほうだ。


「はっ、ざまあねえなお前ら!」
「つ、強えっ……」
「跡部、ノリノリやんなぁ」
「忍足先輩、手、抜かないでくださいね」
「わかっとるで。ほら、がっくんパス」
「おうっ、まかせろユーシ」
「先輩っ。一球入魂ですよっ」
「な、なんなんだよテニス部っ」


流石、といったところだろうか。跡部は次々と少しオーバーすぎるほどのリアクションをとっている。それに連動して、女生徒が出血多量および眩暈を起こしている。それというのも、彼の美技によりテニス部がバスケ部にバスケで勝っているからだろう。
まあ、この柳のデータは初めからそれをわかっていたがな。
問題はそこではない。
そもそも、我々立海大は、先ほど神奈川から走りこみという名の特訓を行いやっとこの東京にたどり着いたわけであるが、その距離や現実味の無さ云々の問題は、この際ツッコミを入れないで貰おう。 


19章


back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -