幸村はヤキモチ妬いてんだよな?
いや、これ殺気だろ、とか心の中でツッコミつつ、俺は急いでゆかに静止をかける。

「何言ってんだよゆか!てめえなんかに誰がやるかっ」
『煩いっ、亜衣子だけだもん、私をちゃーんと愛してくれるのはっ!』
『…お、お姉ちゃん何があったの…?』

なんの勢いか、ぎゅうと音が成りそうなほどに亜衣子を抱きしめている亜衣子に軽く殺意を覚え始めていた時。

「心配しなくても、俺が愛してやるよ」
『ひゃっ、ちょっ、景吾っ。いきなり耳元で話さないでっ』
「……はは、君も物好きだね跡部。あー、イラつく」
「黙れ幸村。てめえなんかにゆか渡すかよ。……まあ、いつまでも突っ立ってんじゃねえよ」 

優雅に、前髪を払うその仕草に本日何人目か分からないが、ばたん、という音が聞こえた。嗚呼、今日救護室は大忙しに違いねえ。跡部も跡部で、騒がれるのは嫌いそうだが、応援されるのはまんざらでもなさそうだし。俺としては、亜衣子の応援さえあればいいっつう話だから、跡部の気持ちを理解する事なんて到底できねえが。
亜衣子と結婚するやら、俺の従兄妹の最強魔王……改め、幸村と俺に大嫌い発言するやらをしていたゆかが、首をかしげた。

『……けーごは何をするわけ?』
「あーん?バスケに決まってるだろうが」
『いや、そんなの知らないし』
「そういうわけだ。俺様の美技を見れる事に感謝しろゆか」
『はいはい』

すると、跡部は何を思ったのかいきなりゆかの前に立ち。

「ってわけで、そのジャージ脱げ。俺のジャージを着とけ」
「………………跡部、それってもしかしなくても喧嘩売ってるよね」
「俺のゆかなんだから、俺のジャージを着るのは当たり前だろう幸村。樺知。ゆかをあの部屋にでも連れて行っとけ」
『ちょ、えええっ、まっ、持ち上げないでか、かひいっ』


跡部は、偉そうに腕を組みながらストイックに唇を上げる。どこか余裕めいたその表情に、言いたくはねえが氷帝の部長である威厳が漂っている。こいつは、どんな時でも自らのオーラをかもし出してるからすげえよな。こいつを認めているからこそ、俺もこいつについていってんだよな。そんなことを考えつつ、ふ、と気付く。


「跡部はバトミントンしねえのか?」
「バトミントンは、選抜のメンバーで戦う」
「なるほどな…。で?テニス部からは誰がバトミントンすんだよ」
「……それはな……」
 

お前だ、と叫んだ跡部の指の先。そこに立っていたのは。



13章


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