「いやあ、俺ってサッカーの素質あるかもね」
「そやな。まさかゴールキーパーにまでイップスをつかったわけじゃ……」
「ん?何か言った?」
 

あー、黒いオーラが見えとる。俺は、妙に背中に走った冷たい悪寒に口をつぐみ、ただ首を横に振った。立海の部長は黒魔術っちゅうもんを使えるんやで、と意気揚々と語っていた四天のスピードスターを思い出し、今ならその意味が分かった気がした。


「それにしても……君って本当に亜衣子が好きなんだね」
「な、なんやねん突然」
「別に。俺、一応亜衣子の従兄弟だからね」
 

釘をさしておこうと思って。そう言いながらも幸村君から再びブラックオーラが生み出された。あかん。兄といい従兄弟といい、亜衣子の周りには危険な男が多すぎる。多すぎて、最早誰が危険で誰が危険じゃないか分からへん。……まあ、それだけ亜衣子がみんなに愛されてるっちゅうことなんやな。嗚呼、そう思うと、そんな亜衣子を彼女に出来た俺って地球上で一番の幸せ者や。うん。ほんまに。


「あ、それは違うよ」
「は?」
「世界一幸せなのは、ゆかを彼女にして、将来には嫁にする俺だから。うん。そこは間違えないで欲しいな」


心底嬉しそうに言いながら幸村君は微笑んだ。彼女本人に言ってやったら相当喜びそうなことを言っているその顔がごっつい優しそうな顔しとったから、少々面食らっていると、「だけど」と接続詞。



「今日一回も亜衣子といちゃいちゃしてないよね」
「……仕方ないやろ、兄貴が……」
 

そうは言っても、亜衣子の笑顔が見れるだけで十分でもある。
普段は大阪と東京という住んでいるところがちゃうから、会うこともできへんし、その微笑を生で見る事なんてもってのほかや。だから、傍におれへんでも亜衣子が幸せそうに笑っとったり、俺にむかってこっそりと小さく手を振ってくれたりしてくれるだけで胸が躍る。
そんだけで幸せ感じるなんて、つくづく俺も馬鹿やな。
すると幸村君は、突然ふうん、と顎を手におき。


「……ねえ、幸せに浸ってるところ悪いけどさ、ちょっと付き合ってくれない?」
「ん、何にや?」


まあ、行ったら分かるよ。
そう笑う幸村君の張り付いた笑顔にもっと早く気付くべきだった。




24章


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