「ってちゃうやろ! な! おかしいやろ幸村君」
「わぁ、やっぱり本場の突っ込みは違うね」
「おおきに。やのうてっ! 今の状況見てみ?俺は縄に縛られる趣味はないんやでっ」
「…………へえ」
「なにその間」
「別に深い意味はないよ白石。うん、別に俺は君が試合中に絶頂とか言ってるくせに、縄に縛られる趣味はないとか言い出すから……。うん、別に深い意味はない」
「めっちゃあるやんか!」


また精市のいじめ癖が始まったが、そんな言い合いは放っておくとして。


「宍戸。今回は進行はこの柳に任せてもらうとしよう」
「勝手にしろ」


ふむ。どうやら宍戸は、白石が身動きが取れないことがそれほどに嬉しいらしく、どうも上機嫌だ。それではここからは俺が進めていく事とする。


『柳先輩、頑張ってください』
「ああ、声援ありがとう亜衣子。お前のためにも頑張るとしよう」
「勝手に口説くな」
「ふむ、宍戸はこの程度でもだめか」
「ノートに書くなっ!」


しかしながら、ナレーションとは俺の力の見せ所と見た。この柳蓮二。たとえこのような短編小説の一章のナレーション担当としても手を抜くことはしない。


「それこそ柳先輩っす!」
「ん?赤也か。だめじゃないか。今は俺は仕事中だぞ」
「だから応援しにきたっす!」
「ほう、してその応援とやらはまさか弦一郎の許可無しで来たのではないだろうな」
「……や、やだなあ。そんなわけ」
「あーかやっ!どこへ逃げたっ!今から練習であろうがっ」
「げえ、や、やべ。じゃ、柳さんっファイトっすよ!」
 

まったく。立海の二年エースにも困ったものだ。弦一郎に軽く手を振ると、彼は律儀に帽子をとって外へと向かった。
どうやら、試合前の練習だろう。たとえこのような跡部が気まぐれで考えたような遊びこととはいえ、我らが立海大が負けることは許されなぬ。といったところだろう。まさに皇帝の異名を持つ弦一郎らしい持論には、俺もすこし笑みが溢れる。まあ、それ以上に困ったのは、俺の少し離れた場所に座っている宍戸亮この男であるのだが。

彼がシスコンという類のものに分類されるのは周知の事実だろうが、彼は少し度が過ぎているように感じているのは俺だけではないだろう。現に今も、彼の最愛の妹である亜衣子の傍を片時も離れない姿を見ているとまるで恋人か婚約者という単語が似合いそうなしだいだ。

しかし、そこだけでいうと彼らは仲のよい兄と妹ということであろうが。
しかし、ここで上がるのは一つの問題。
彼の妹には、白石という立派な恋人が存在することだ。白石と亜衣子の彼らがどのようにして出会ったかの経緯は俺の口からではなく本人から言うことと思うが、宍戸と白石の関係の悪さが今、明白に現れているのは間違いない。




18章


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