「突っ込まないで。とりあえず私は体操服を着ている設定にして下さい。お願いだから頼みますシスコン宍戸」
「敬語なのか馬鹿にしてんのか理解できねえし」 


いや、さっきから一生懸命に体操服であることをアピールしていることはしているが……体操服、というか、ゆかが着ているのは思いっきり。


「そうだよ、宍戸。ゆかが着てるのは俺のジャー……」
『言わないでーっ! 違うっ、た、体操服だからっ!断じて違うっ』
「へえ。お前の学校の体操服は黄色なわけ?……はあ……。お前も少しは亜衣子を見習って素直になったらどうなわけ?」
『煩い黙ってください大魔王っ』


まるでゆでだこのように顔を真っ赤にしたゆかは、相当恥ずかしいのか、幸村の立海のジャージを纏い、うつむいている。亜衣子の氷帝のジャージ姿はとてつもなく最高で、亜衣子とは比べ物にもなんねえが、こいつのジャージ姿は、ある意味で新鮮だ。それも、他校である立海のジャージ。
今のこいつの姿をこいつの学校の奴が見たら、こいつが本当に会長なのかと疑っても仕方ねえだろう。まあ、こいつもそれなりに顔はいいわけであって。……普通に可愛いと思った。


「宍戸。さっきから見すぎだよ。まあ、お前がゆかに惚れるわけないだろうけど」
「あ、当たり前だろっ! 誰がこいつなんかに惚れるかっ」
「フフフ、そうだよね。俺って本当に特殊だと思う。自分で自分を褒めたいよ」
「いや、お前一応こいつの彼氏だろうが……」
「俺が付き合ってやらないと、こいつ一生一人身だと思うから仕方なくだけどね」
 

なんつう彼氏だ。いや、こいつの性格は前からこんなもんで、これがこいつなりの愛情表現と言えばそうなのかも知れねえが……。


『あーもうっ、二人ともだいっきらいだーっ』


ゆかが、叫んだのに合わせるように、バトミントンの羽とラケットを手にした亜衣子が現れた。いつもは俺達レギュラー陣が着用しているそのユニフォームを着こなしている亜衣子は、その肌の白さといい、人が多いからか緊張している声といい、我が妹とはいえ、可愛い。……ち、違え。そんなことを言いたいわけじゃなくて。


『あ、お姉ちゃん』
『亜衣子っ、私、亜衣子と結婚するっ』
『……へ?』


今、俺の右隣(つまり俺の従兄妹)からとてつもない黒いオーラが出た気がしたが…。俺はそこにあえて触れないこととする。



12章


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