自分が人より優れていると思ったことはない。
平々凡々な生活を生きてきて、小さな苦労はあったものの、どうしようもない絶望にさいなまれたことはない。
そんな私の人生は彼から見たら、酷くちっぽけなものなのだろう。
「幸村君は、私みたいな平凡な人間は、好きじゃないんだと思ってた」
「ふはっ、何それ」
彼が笑うと、ゆるいウェーブがかった髪が揺れていて、綺麗だと思った。
「前にも少し話したけど、中学生の時に入院をしたんだ」
真夏の太陽に照らされた白い頬。淡い色のカッターシャツの彼。
「あの日全てが終わると思ったし、それこそどうして俺なんだろう、って思った」
彼が抱えているものは、きっとその苦笑いの裏側にあるものなんだろう。何も知らない私は、彼に同調もできないし、肯定も否定もできない。只々頷くしかできない。
「リハビリは本当に大変だったし、必死の思いで復帰したのに、全国大会制覇は逃しちゃうし。頑張ったからって報われるわけじゃないことも知った」
だからこそ、と幸村君の手が私の頬を撫でた。
あまりにも優しい顔をしているものだから、意味もなく泣きそうになった。
「いろんな体験をして、いろんな言葉をかけてもらって、そうやって俺は生きてきたけど、それが特別だと思っているわけでもないんだ」

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テーマ「人外ファンタジー」
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