結婚式を明日に控えた私達は、準備に追われてバタバタとしたまま就寝することになった。それこそ、今日は寝不足なんかになったら明日の顔が大変な事になってしまうのだから。なんていったって明日は一生に一度の晴れの舞台。大好きな人と生涯の愛を誓う大切な日がもう明日に迫っていることに少し驚くと同時にしみじみ実感していると、不意に大輝の腕が伸びてきた。がっちりとした彼の腕が私を包み込むように回されて、それに準じるように私も彼の腕の中に納まった。


「んだよ、にやにやしやがって」
『ふふ……大輝もだよ』
「……うっせえ……明日でやっとお前を俺のもんに出来んだから当たり前だろうが」
『……大輝も私のものだよ……なんか、……変な感じ』


今日を迎えるまでに沢山喧嘩もしたし、それこそ何回か別れようとも思った。それでもお互いにこの人じゃないと駄目なんだって気づいて、その度にまた彼を好きになって、彼も私を好きになってくれたのだから明日を迎えようとしているんだと思う。すれ違う度に、苦しくなる度に、やっぱり大輝が好きだって。そんな想いを再確認するように噛み締めていると、「なあ」と大輝の声。いつもよりも少し低い声にどうしたんだろうかと顔を見上げると、少しだけ緊張したような顔つきの大輝。


「大輝? どうしたの?」
「安っぽい言葉しか言える気がしねえけどさ……あー、なんつうか」
『うん、なに?』
「……泣かすと思うし、怒らせると思うし……それこそ、喧嘩もすると思う」
『……うん』
「けどな、ぜってー守れることもあんだよ」


私の体をぎゅうと力強く握る大輝。そんなに力をこめなくても逃げないよ、と苦笑しつつ、その手の中から想いがじんじんと伝わってきて、まだ何も言われていないのに既に泣きそうになってきた。彼の真剣な瞳なんて見るのは本当に久しぶりで、どうしようもない想いでそっと唇から紡がれた言葉を待つ。


「俺は、栞を……一生離さねえ」
『っ……』
「あー、なんだ、その……グラビアもあまり見ねえようにするけど、まあ、多少は、な?」
『……子供が生まれた後に見てたら蹴り飛ばすから』
「みっ、見るわけねえだろ! ああっ、もう今日から見ねえよっ!」


別に、今更そんなことで怒ったりはしないのに、やけに必至な彼が面白くてついからかってしまった。そんな一瞬さえも幸せでくすくす笑っていると「そういうことじゃなくてだな」と照れくさそうにそれでいて嬉しそうな顔で彼は微笑んだ。


「……一生、栞だけを守るし、一生栞だけだ!」
『……うん、私もだよ』
「あー、あと大事なこと一つ」
『ん?』


一度触れるだけのキスがそっと降ってきた。触れ合うだけの口付けに甘い轟きと。刹那の愛。


「一生……栞を愛してる」
『……うん。私も、ずっと……ずっと大輝が好きっ……大好きっ』
「お、おまっ……泣くなよ」


私、幸せだよ。すごくすごく幸せだよ。きっとこれからも今までみたいに喧嘩もするだろうし、お互いに分かり合えないこともあるかもしれないけど、それでも大輝が好きだって思いたい。そんな感情を全て伝えたいのにうれし涙がそうさせてくれない。だから、せめて少しでも伝わるようにと「幸せになろうね、大輝」とこぼすと彼は、「幸せになんぞ!栞」と少年のようなそんな笑顔で、もう一度キスを落としてきた。さあ。今日はこの幸せに包まれながら眠ろう。そして明日になったらきっとまたこうやって泣いてしまうんだろうけど、その隣にこの人がいてくれたらそれは、世界で一番幸せなことなんだから。生まれてくる幸せを一緒に温めるように私達はそっと瞳を閉じて未来を夢見るように眠りについた。


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aeon様提出



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