俺、おまのこと好きなんだけど。

メールで突然そんなことを言ってきた青峰は内心正真正銘の馬鹿なのかと思った。一体どういう風の吹き回しでそんな流れになったっていうんだ。しかも、「おま」ってなんだ。せめてお前って書きなさいよ。っていうかそこじゃなくて、意味が分からないんですが。とりあえず、どうせ男子同士の罰ゲームか何かで告白をやれとか言われたに違いないと思い「王様ゲーム? それともババ抜き?」とだけ返信して携帯をポケットにしまう。……内心は、心臓が破裂しそうだなんて、本当に笑えない。青峰とは高校の入学式で席が隣で、なんかよく分からないまま意気投合してお友達となった。悪友だった彼に惚れてしまったのは、体育祭で足を肉離れ起こした時に、彼が私をおぶってくれた時だ。別にいいよ。という私を強引に「いいから乗れよ」と言いながら彼は保健室まで運んでくれた。青峰の背中があまりにも広くて、大きくて、恋に落ちる以外の選択肢が無かったんだから仕方ない。
だけど、今更告白なんて出来る関係じゃないし、今も悪友としてメールさせてもらっているにすぎない。……それなのに、告白とかしてきやがって。ちょっとはこっちの気持ちも理解しとけあほ峰。
さっきまでは授業中に携帯開いてまで青峰とメールしてたいって気持ちがあったのに、それがどんどんとしぼんでいって、切なくなってきた。


『好きとか簡単に言うな、ぼけ』


同時に授業終了のチャイム。急に騒がしくなってくる教室で机に伏せた。……本当に好きなのに。……なんで、あいつは理解しないかなあ。あああ、もうむかつく。むかつきすぎてやばい。こっちがこんなに想ってんのに、あいつは、あいつはっ。


『って……なに、電話?』


あんまりにも深く考えすぎていたから気づかなかったが、どうやら電話が鳴っていたようだ。バイブ設定にしていたのに気づかなかったなんて、どんだけあいつのこと考えてんのよ。電話にでようとした時に運悪く消えてしまったそのバイブ。一体誰だよ、と携帯を開くとそこには13件の着信。……は? え、なんで。ぶぶぶ。そしてまた鳴り始めたその携帯の通話ボタンを押す。


『も、もしもし青み……』
「お前調子のってんじゃねえぞこらっ、なんで電話ムシしてんだこのブスっ! ドブスっ」
『は? っていうか、なに。わざわざ電話する必要はないでしょあほ峰』
「てめえっ、お前その呼び方っ」
『アホ峰、馬鹿峰っ、あんたなんて滅びろ馬鹿っ』
「……は? おい、ちょっ」
『ああああっ、もう、乙女心でも勉強すれば? 蝉峰っ、何が「好き」よっ! あんたの罰ゲームに付き合うほどこっちは暇じゃないのよばあああかっ』



言い切った後で、そこが教室だったことを思い出して、とっさに周りを見ると驚いたように私を見つめるクラスメイト。恥ずかしくなって、あわあわとしながらももう一度机に伏せた。あああ、これも青峰のせいだ。なんなのあのガングロ男。


「ガングロで悪かったな」
『……ひいいいっ』


なんであんたがここにいんのよ。教室違うのに。っていうか、何しにきたわけ。
……とまあ、そんな言葉を吐くことも出来ずに、唖然としていると、むすりとした青峰が私を鋭い瞳でにらみつけた。やばい。これは死亡フラグ。かなり不機嫌な青峰に今更謝っても遅いだろうし。……というか、あほ峰とかは日常的に言っているからなんで今更おこっ。


『んっ……え……えええっ』
「……これで分かったか?」


え、いや、なんで。なんで今私はキスをされたんだろうか。驚いたままで瞬くと、青峰は耳元に口を寄せて、そのくせに大きな声で「お前のことが好きだって言ってんだろうが!」と叫んだ。いや、なんで叫ぶ。というか、え、本気だったんですか? っていうか。


『あの、両思い、なんですか?』
「……まじか」
『え、うそ、え、ちょっ』
「よし、じゃあ早え。俺の家行くぞ」
『ちょおお、待て、青峰、え、待って。ええ』


するとまた不機嫌そうに息を吐いた青峰はまた先ほどと同じように口を耳元に寄せて。


「やっとお前を手に入れたのにキスだけで終わらせるわけねえだろ」


そんな意味深な言葉を今度は誰にも聞こえないように囁いてきたものだから、今度から青峰のことを策士峰君と呼ぶべきかどうかと一瞬考えてしまったのは、口にしないでおこう。



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