これで、よかったんだ、と繰り返し心の中で唱えて。
少し痛んでしまった髪が揺れる窓際でぼんやりと外を眺めていると肩を叩かれた。見るとそこには、さつきちゃんの姿。


『あ、……おはよ』
「おはよあんなちゃん。……大ちゃんと別れたんだって?」
『……うん』
「……あまり、無理しないでね」


そう言いながら彼女は今にも泣きそうな顔をしながら私をそっと抱きしめてくれた。嗚呼、分かるよ青峰。あんたが好きになった女の子は他人のために泣けるような子なんだ。そんな彼女を妬ましく羨ましいとしか思えない自分が嫌で嫌で、彼女にばれないようにそっと唇を噛み締めた。
テツはこんないい子と付き合えて果報者だね、と前に一度言ったことがある気がする。その時のテツは一度何かを考えるそぶりをした後に「そうですね」と笑っていた。
嗚呼、駄目だ。昔がプレイバックしてくる。
青峰のことこんなに好きだったんだなあ。最初はたんに憧れとか尊敬とかそんな感情から始まって。気づいたら彼を幸せにしたいなんて思っていて。やっぱり最終的には彼のことを愛おしいと思っている。彼に体を抱かれる度にしびれるようにうずいていたのは体だけじゃなくて、心だった。
この人の心が欲しいと。そう望んでいた。
青峰大輝と言う人物から愛されるさつきちゃんがうらやましくてたまらなくて、彼女になれれば私を愛してくれるかもしれないなんておこがましかった。結局傷付いたのは自分だけだ。


『さつきちゃん。今日からまた一緒に休み時間もお話できるよ』
「……っ……あんなっ……もう、傷付かないでよっ……」
『……さつきちゃん』
「もう、あんなが傷付くのは見たくない」
『……私は……』
「私は、あんなが幸せならそれでいいの」


涙声で言うさつきちゃんにやっぱりこの子にはかなわないと思った。私みたいな醜い感情しか持っていない馬鹿じゃ、彼を愛することはおろか代わりなんて出来なかったんだと。


「ありがとう。……さつきちゃんがそういってくれるだけで……幸せだよ」


嗚呼、世の中は本当に綺麗事なんかじゃ通らない。今、青峰は私以外の女の子と一緒にいるんだろうし、私もきっとそのうち他の誰かをすきになるんだろう。いや……好きになれるかはわからないけど、思うこと歯一つ。
青峰、幸せになって。
そう願うことくらい許してください。






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