あー、苛々する。カルシウムとかそんな次元じゃなくていらつく。俺の目線の先にはつい一週間前にカップルになった男女。え、なに。まさかここでキスするわけ? うわ、まじで。ありえないんだけど。ってかもうリア充爆発しろ。っていうかていうかもうこの世からカップルいなくなれ。全人類とはい言わない。熟年夫婦とかも除外してあげる。だけど、あからさまに付き合い始めでいちゃこらしている奴ら爆発しろ。木っ端微塵になれ。うん、俺って神の子だからきっとそのくらいは出来るんじゃないかって思うんだ。いや、もう高校生になってまで神の子ってダサいって誰かが言っていた気もするけど、そんなの知ったこっちゃないよね。え、なに? 僻みか何かなのかな。凡人は凡人らしくほざいとけばいいだろ。
っていうかさ、「幸村は女に困りそうになくていいなー」ってなんなの? は? 隣の席の木村? 佐々木? あー、男の名前なんていちいち覚えてないんだけど確かそんな名前の奴がぬけぬけと言ってきたからとりあえず笑顔で殺してみた。馬鹿だろお前。どんだけそこらへんの奴に告白されても本命から告白されないと意味がないんだけど。ああああ。マジでイライラしてきた。リア充爆発した後で一回俺に謝罪入れに来い。


『じゃあ、リア充になる?』
「は?」
『幸村が相手を選ばないでもいいんだったら私が相手になってあげる』
「は?」


さっきまでの俺の叫びを散々と愚痴ってやると山崎はさも当たり前にそんなことを言った。え、なんなのこいつ。堂々と言ってながら、俺と目があったらちょっと目線をそらすとか何事。え、俺がお前をどんだけ好きか知ってて言ってるわけ? 本命お前だって知ってて言ってるの?


「え、え?」
『え、いや、何回も聞かれると困るんだけど。だから、つきあ……』
「よし、リア充長生きしろ。そして今すぐ食べていい?」
『え。なにこの単純男』


山崎はげんなりした顔をしながらも俺の頭を一回撫でて「案外君も可愛い性格してるよね」
なんて笑った。馬鹿だなあ。俺がこんな顔出来るのはお前の前だけに決まってるだろ。そんな感じの台詞をにっこりと笑いながら言うと彼女は頬を染めた。やばい。可愛い可愛いもう今すぐ抱きしめてぎゅうぎゅうに締め付けて、俺の酸素を山崎が吸い込むくらいのレベルになればいいのに。あー、もう何が言いたいかって、リア充最高ってこと。
あれ、俺ってなにをいらついてたんだっけ?






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