『宍戸さーんっ! ラブ! 宍戸さん大好きっ!』
「うううっ、うっせーよっ! 大体長太郎の真似してんじゃねえっ」
『えー、そしたらぁ……宍戸さん、下剋上です! ラブ!』
「今度は若かよ! っていうか、若はラブとか言うかよっ」
『ううー、じゃあ、……宍戸、俺様の愛に酔いな』
「げえっ、おまっ、いい加減にしろよっ」


なんだかんだ言って逃げる宍戸を追い掛け回しながら私は疲れたからとりあえず立ち止まった。私に追いつかれるのがそんなに嫌なのか、後を振り返ることもなく走り去った。実を言うと、中学校から高校にあがるまで宍戸に一生懸命片思いしているのに、彼は全く気付いてくれない。いや、あれか。もしかして私の思いが強すぎて困っているのか。そういうことにしておこう。ということで、今日は宍戸の誕生日だし人生の中でも記憶に残る誕生日にしてあげようという私の恋心をあいつは見事に踏みにじったわけだ。そんなとこも好きだ宍戸。……とか思いつつもなんだか疲れてしまった。それもそうか、宍戸はばりばり現役テニス部。私はしがないパソコン部。追い付けるわけもないし、なんだかんだ置いて行かれるしで体力なんてヒットポイントゼロなんだよ。


『だから、おぶってくれない忍足』
「意味わからんし。っていうか、お嬢ちゃんこりんなあ。去年は宍戸の靴箱を自分の手紙でいっぱいにして、その前は宍戸の帽子に猫耳やったな」
『えへへ。どうしよう。思い出したらにやけてきた。宍戸大好き』
「まあ、俺に言われてもしゃーないけどな」


忍足はそんな言いながら頭を撫でてくれた。
放課後また宍戸を探そうかとも思ったけど、あんまり追い回すのもかわいそうだし、ダメもとで「屋上きてほしーな(;m;)」みたいなメールを送って屋上へと向かった。まあ、絶対来ない。だって宍戸はテニス大好きで、そんな宍戸が大好きなんだもん。しかも来ないとしても、屋上から見えるテニスコートに向かって叫んでやるんだ、とか一人でルンルンしながらテニスコートを探すけど、彼はいない。うーん、もしかして女の子に追い回されているのかな、という思考と屋上の扉が開いたのはよーいどん、で走り出す小学生のスタートくらい一緒で、私は一瞬ぽかんとした。
来てくれた。宍戸が来てくれたっ。それだけで嬉しくて嬉しくて、ああ、もうどうしようもない。



『宍戸ーっ!』


屋上の入り口にいる宍戸に満面の笑みを向けて私は叫ぶ。


「んだよっ」
『来てくれてありがとおっ、愛を感じたっ』
「っ、う、うっせーよ」
『それとねー』
「おう」
『誕生日おめでとおおおっ、生まれてきてくれてありがとうっ、すごくすごくすごーく大好きっ』


宍戸は、しばらくぽかんとした顔したけど、すぐにくしゃりと笑って「来いっあかり」って言って腕を広げてくれた。私のために開かれたそのスペース。
ああ、もうっ、そんなことして押し倒されても文句なんか言わないでね。



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宍戸さんおめでとうー!!
2012/9/29\(^o^)/



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