なんというか、くりくりっとした髪の毛とか。まんまるの瞳とか。嬉しそうに駆け寄ってくる姿とか。全てが彼は愛おし過ぎる。というか、愛おしいを通り過ぎて別の次元に行ってしまいそうなくらいなんですが。


『あーやばい。どうしよう雅治。どうしよう。ああ、どうしようどうしよう』
「なんじゃそれ。五七五?」
『……あんた喧嘩売ってるわけ?』
「てへぴよ」


何よそれ。え、あんたはついに自分で流行語大賞でも狙うつもりなの。とまあ、いつもならそんなことを突っ込むのだけど、今日はそうもいかない。なんせ、私はすこぶる緊張しているし、それと同時に後悔もしているし嗚呼、もうやだ。どうしよう。もうどうしよう。


『なんで、切原君ってばあんなにもてるのよっ』
「俺には負けるけどのう」
『死ね詐欺師っ』
「うわ、辛辣すぎてまーくんへこみそうプリ」


もうこの白髪の無駄にフェロモンだけある男の意見は聞くまい。それはそうとして、問題は全く解決されていない。よし、自分でもう一度ゆっくりと考え直したら打開策が出てくるかもしれない。
まず今日は、私の密かな初恋の相手である切原君の誕生日であります。たまに雅治のところに遊びにくるその子に恋をしたのは、彼が私のほうを見てにこりと笑ってくれたとき。私は直接は喋ったことなかったけど、雅治と話している切原君を見ているだけで胸がキュンキュン鳴っていた。そんな彼の誕生日。それに便乗して告白でもしちゃおうかなあ、とか邪なことを考えながら買ったプレゼントを手に握りしめて、彼の教室へと向かった。……まではよかったんだけど、二年生の教室の階に近づいたら、それはもう人がたくさんいまして。きゃーきゃー言っている女の子の向こう側に一瞬見えたのは、私のお目当ての男の子。その子を囲む可愛い女の子たち。それがまさか全員切原君のファンの皆様なんてことは私は知りませんでした。以上。


『って、結局何も解決できてない……』


気づけば目の前でぴよぴよ言っていた雅治はいなくて、私の一言はむなしく空気に消えた。手にしたプレゼントの中身はありきたりなタオルで、あの様子じゃ確実に私以外にもタオルを渡している子がいるはずだから、私のプレゼントはもう無意味じゃん。机に突っ伏しながら何故か泣きそうになって、「もーやだ」とだけ呟いた私に「なにがっすか?」って返事。雅治はこんな時に切原君の真似をしてくるなんて私にどんだけ深手を負わせたいのよもう滅びろ。


『雅治、あんたいい加減に、しな……っ』
「え?」
『ひ、ひいっ、き、き、きき切原君っ!?』
「うす」


なんで、なんでここに今日の主役様がいるんでしょうか。あれ、もしかして雅治のイリュージョンかな、とか思いながら口をパクパクしていると、にかりと笑う切原君。


「やっぱ先輩めちゃくちゃ可愛いっすね」
『へ、あ、ええっ、あの、そのっ』
「先輩、俺今日誕生日なんすよ」


ええ、知ってます。知っていますとも。
真っ赤な顔のままでがくがくと頷くと、彼の手が私の前に伸びてきた。そして。


「そこでプレゼント欲しいんすよ」
『あ、あの、これっ』
「だから……先輩をください!」



そんな台詞が聞こえてきた瞬間もれなく私の思考はアウト。ふらりと天井を仰いだその日が私と彼の記念日になりました。



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ハッピーバースデー赤也!!
これからも可愛い赤也でいてね!
2012/9/25






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