今日、午後から予定とかある? なんて弱々しい声で電話があったから、一体何事かと俺は携帯片手に瞬き。


「ぶちょーっ、だ」
「赤也うるさい」
「っ、す、すいませんっ!」


今日は、午後からテニス部の連中とファミレスにでも行ってたまには語ろうか、なんて話をしていた。つまり予定はあるのだけど。……なんか、様子がおかしい。っていうかおかしすぎて凄く心配なんだけど。ふ、と視線を感じてそちらを向くと、どこか含み笑いをする柳。
借りを作るのは、あまりいい気もしないし、テニス部の連中には悪いけど、俺はあかりを優先するに至ったのだ。


『精市、好き』


そして、ここに繋がるのだか。
……え、なにこれ。どういうこと。
いきなりそんなことを言い出したかと思えば、俺の体に柔らかい感触。え、え、え。なにこれ、え、これって俺の彼女だよね? あの、いつもツンツンしてて、ツンデレと言うよりはツンツンと言うしかないんじゃないかってくらいの彼女だよね? ぼんやりとそんなことを考えながら柄にもなく頬が笑えないくらい熱くなり始めるのを自分でも感じた。


「……え、どう、したわけ」


ぶっきらぼうにそう言いながら、必死で理性を抑える。冷静になれ精市。そして冷静になってくれ俺の心臓、及びその周辺の臓器。と、何か。大体、いつもと態度が違いすぎて怖いんだけど。そんなことを思いつつも不意に視線を下げると目に映ったのは真っ赤な耳。


「……ねえ、耳真っ」
『赤じゃないっ、違うっ、……っ、じゃなくてっ、あぅ、そのっ、』
「なに」


促すように声を低くするとあかりは声をつまらせながらも拙く話し出した。


『精市、が、その、私が、あまりにも、可愛くないから、そんな、可愛くない、彼女は、嫌だからっ、別れようと、思って、るって……聞いてっ』
「は? 誰に」
『ふぁん、の人……』


殺す。え、誰。は? っていうかそんな台詞真に受けてたのばっかだなーお前。とか思う前に、俺の視界に広がった泣きそうな顔。それと、一瞬だけ唇に触れた柔らかな感触。


「……へ」
『き、らいにならないで……、いつも、言わないけど、私、精市、のこと、ちゃんと好きなの』


そんなか細い声が届いた瞬間俺の理性がどこかに飛んでいった気がした。
本当にツンデレって怖い。とりあえず冷静になれないよ精市、とか自分でぼやきながらもあかりを俺の家に強制連行することにした。
お前が悪いんだから、頼むから潤んだ瞳で見上げるな。ここで食べちゃうだろ。









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