好きだと言えば終わってなかったのかな。ねえ、誰か答えてよ。
結局俺の心はあの日のままで止まっているのに、世界の時間だけ進んで行く。
いや、進まない、と言えばいいのかな。そしたら少しは楽になるのかな。誰か答えてって言ってるじゃないか。無視なんていい度胸してるよね。
不意に彼女に会いたくなる度に、会えないもどかしさに吐き気がする。でも結局吐けなくて、喉のうちの微肉に胃酸がせり上がってきて空気を外に押し出すだけ。
俺があの時、あのまま監禁でもしとけばよかった? それとも、お互いが離れないように首輪とかロープとかで縛っとけばよかった?

それとも。


『精市。また明日ね』


そう言った君の手をずっと離さなければよかった?
そしたら、次の日もう一度君の笑顔を見れた?
ねえ、誰か答えて。答えが欲しいんだ。誰か。誰か。誰か!!

俺に彼女をもう一度差し出して。
返してくれ。俺の、俺の大切な彼女を。


『精市、私ね夢があるの』
「夢?」
『いつか、世界中の人が笑顔になれるくらいの歌を歌える歌手になるの!』
「……ふうん」
『あー! 信じてないでしょー』
「信じてるってば。お前はそこらへんは頑固だしね」
『えへへ』


サイン欲しいなら、早めに言ってよね?
そんなことを言いながら笑っていたのを今でも思い出せる。ああ、残酷なほどに彼女はずっと美しい。黒い額縁の中で微笑む彼女は、永遠に美しい。
俺の手の届かない世界で微笑むあかりは、美し過ぎて、苦しい。


「ねぇ、そっちで夢は、叶ったかい?」


歌を歌っているのかな。金色の世界で広がるような美しい声を響かせているのかな。


「俺に一度も歌ってみせなかったくせにね」


納得のいく歌を歌えるようになったら、精市にも聞かせてあげるからね。そんな台詞は、甘酸っぱいほどに俺を極上の地へと導いていたのに。


「馬鹿だなぁ……俺の耳に届かないなんて、意味ないだろ……」


そしてまた俺は、その写真の美しさに涙した。
こんな想いなら消してしまいたいのに。でも君を忘れたくなんてないんだ。

もう、キミの声は二度と俺に響かないのに。


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ブログに載せたやつの再録。






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