財前の誕生日がやってきて、気がついたことは彼が確実に去年よりも大人びていたことだろうか。
それを気づいたというのも、去年の全国大会の時の写真に映る彼を見たからであって、あの少し幼かった私の後輩は一体何処に行ったのかという変貌ぶりかもしれない。
男の子の成長はやっぱり早いんだなあ、とか呑気に考えてる私の頭の片隅と、目の前に歩く財前。
恋人とかいう区切りが無くてもきっと彼のことを愛おしいと思えるんだろうな、とか考えてる時点で私がどんだけ彼に惚れているのかが分かる。
不意に触れたくなってかれの小指を小さく握ると、すぐに柔らかく手を包まれた。


「先輩」
『いやだった?』
「嫌だったら、こないことしないっすわ。……って言ってもらえたら嬉しいですか?」
『鬼畜財前』


まあ、そういうところもね、好きなんだけどね。指に力を込めながら彼の背に微笑む。


『財前』
「……なんすか」
『誕生日おめでと。今までもこれからも、大好きだよ』
「……ほんまに、ほんまに馬鹿なくらいデレでれな声やな。ださいっすわ」


だけど。
財前は、私の体を優しく抱きしめながら、小さく笑った。

ねぇ、大きくなったね。
あの頃よりも、身長も高くなったし、声も低くなったね。
だけどね。


「……そっくりそのまま返しますわ」


そうやって照れ臭そうに声を零す君への想いはあの頃と変わらないよ。
大好きな君とこうやって触れられるだけで嬉しいんだよ。
ありがとう、と口にするはずだった唇は財前の唇になんなく掻っ攫われました。




ーーーーーーーーーーー
ハッピーバースデー*0720*財前
ギリギリ間に合った。



- ナノ -