その日の放課後。いつも一緒に帰っている生徒会のお友達がなにやらお仕事があるために一人で帰ることになった。生徒会なんて堅苦しい仕事する友達をつくづく尊敬する、というか、うん、物好きもいるものだ。そんなこんなで靴に手をつっこんで、かさり。は? 小さく折りたたまれた紙はなにかのノートの切れ端だろう。丁寧に折られたそれをあけると、英語と数字の組み合わさった羅列それと。


『ゆき……むら……せいいち』


嘘だろ。まさか。え、ご本人のわけない。そんなわけ無いじゃないか。と思いつつも、その字はいつも隣の席でさらさらと軽快にノートを取っている彼の字によく似ていて。


『……で、登録しちゃう私って』


とりあえず帰宅してなんだかんだでそのアドレスを登録したものの、本当にこれがあの幸村君かわかならかったから、名前のところには「幸村精市(仮)」と登録しておいた。いやいや、でもまさかありえない。あの幸村君が私にメアドと電話番号教えて得られる利益ってなによ。損益しかないに決まって。


『っひいいいい、来たっ』


画面に流れる幸村精市(仮)の文字。急いで本文を開くと「やぁ。幸村だけど、登録してくれたかな?」なんて、やっぱりご本人でしたどうしようどうしよう。うわあ、もうどうにでもなれと思いながら「こんにちは。羽島です。登録しました」と打った後で急いで(仮)をとっておいた。ううむ、それにしても何か用事でもあるのだろうかと身構えているとふと気づいたことが一つ。


『なんで私のメアド知ってんだろ』


思い当たる節はいくつかある。私の友人の数人は既にこの男幸村の虜となっている。だから、彼に話しかけられたら私のメアドくらい簡単に教えていそうだ。くそう。個人情報保護法もクソもない。でも友人には最近幸村君が私に異常なくらいに話しかけてきているのをまだ気づいていないはず。それか、気づいていても突っ込んできていないか。ああ、色々と頭が痛い。そうこうしていると、やっぱり友人からメールが来ていて「なんで幸村君と仲良しなわけ?白状しなさい(・m・)」なんておかしな絵文字がついていて、ああああ。面倒臭い。ツイッターに「修羅場なう」とでも呟いてやろうかとも思ったけど、私が悪いわけじゃないし、どうせ幸村君はおもしろ半分だろうから、神の子ファンな友人には「ただの知り合いだと私は本気で思ってる。というかそれ以外ない」とだけ打っておいた。あとは明日にでも説明すればいいだろう。


『って……え』


絶句する私の携帯画面には、9桁の番号。え、あれですか。携帯電話番号というやつですか。うわあ、どうしよう。これもしかして明日友人に殺されるんじゃないかな私。げっそりとしながらも、一応私の携帯番号も教えないと失礼だろうと思い送るところを見ると、どうやら私の中での幸村精市ランクは前より少し上がっているのかもしれない。そう思いながらメールをスクロールした一番下には、(仮)なんてつけないでね、の文字。……やっぱり訂正。上がってない。ってかなんで知ってるの怖い怖い。結果彼のランクは神の子から魔王にしようと思う。



07



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