「俺さ美化委員会なんだよね」


数学の授業後の休み時間に、そんなことを口にした幸村君は私に何をしたいのかよく分からない人だ。この間、テニス部の部長さんだって言い出して、いや、どうでもいいんだけどとは言えずに頷きはしたけど。少しずつ俺のこと知って欲しいとか言われたけど、何故?
そして次は委員会ですか。私に教えてどうしたいんですかこの人は。


「好きな色は水色かな。君は?」
『……あの、赤色、とか』
「ふふふ、君らしい色だね」
『はぁ、そうですか』


何をもって私らしい色なのかが不明だけど、とりあえずこんなに仏頂面している私に話しかけて何が楽しいんだろうか。
もともと私は、一般的な女子みたいに可愛らしい反応なんて出来やしない。私の友達諸君はこの男にゾッコンだったけど、彼女たちが話す幸村とやらの情報は、正直私には右から左だった。……そりゃ私にだって恋をしたこともあるし、トキメキを感じたことくらいある。それも今となってはいい思い出だけど。
そんな中で不意に目を上げるとまだニコニコ顔の幸村君がいた。


「ねぇ、一つどうしても聞きたいことがあるんだけどさ」
『え、あ、なんでしょうか』
「俺は君の事好きなんだけどさ、羽島は俺のこと、好き?」
『……は?』


空いた口がふさがらないってきっとこの事だ。さっきと同じ顔したままの幸村君は、答えを促すように首を傾げる。つられるように首をかしげると、彼は驚きながらも、それは優しい笑みを浮かべる。
嫌いというわけではない。というか、今までこの幸村君は、私の日常の中に存在しなかったわけだから、好きも嫌いもないんだけど。でも、そんな言い方をするのは気が引けて、ううむと悩んだ結果。


『その、普通、です?』
「……普通?」
『あ、あのっ、えーと……幸村君のことは、友達から聞いたことがある程度で、別に嫌悪感を抱いてるわけじゃないし。かといって、みんなみたいに幸村君のファンとやはではなくて。でも、君はなんか、優しいし。……でも、その』
「じゃあ、こうしよう。俺と友達になってください」


あまりにもナチュラルにそんなことを言われたものだから、「あ、はあ」とか曖昧な返事をしながら私はこのよく分からない展開についていけなかった。

というか、幸村君が言う「好き」は恋愛感情? いやいやあり得ない。それは勘違いも甚だしい。私と友達だなんて、もしかして……。幸村君って、女友達いないわけ?そんなことを考えながら「よろしくお願いいたします」と言ってみました。


03



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